中小企業向け人事評価制度導入ガイド|第6回 評価者向けスキルアップ研修

評価は人が決める!公正を保つ 評価者育成&コミュニケーション術

評価は人が決める! 公正を保つ評価者育成&コミュニケーション術


目次

はじめに

これまでのコラムでは、中小企業における人事評価制度の重要性や導入メリットから始まり、設計フロー、等級制度によるキャリア開発、評価基準の作り方、そして運用プロセスとルールの徹底解説まで、体系的にご紹介してきました。
特に前回(第5回)のコラムでは、「評価の流れをスムーズに運用するためのプロセスとルール」に焦点を当て、目標管理(MBO)との連動、評価面談や校正会議の進め方、評価結果を社員にフィードバックする方法などを取り上げました。

しかし、どれだけしっかりとした評価制度を設計し、運用面の仕組みを整えたとしても、「最終的に評価を下すのは“人”である」という事実は変わりません。評価者である管理職やリーダー、経営者が制度の意図を理解し、公正に評価基準を運用できなければ、どんなに素晴らしい制度も形骸化してしまう恐れがあります。

そこで本コラム(第6回)は、「評価は人が決める! 公正を保つ評価者育成&コミュニケーション術」というテーマで、評価者側のスキルやマインドセット、そして社内コミュニケーション手法を深掘りしていきます。

  • なぜ評価者研修が欠かせないのか
  • よくある“評価バイアス”をどう排除すればよいのか
  • 評価者が陥りやすい失敗例とその対策
  • 中小企業だからこそ必要な“コミュニケーション設計”の具体策
  • 評価者間の連携や情報共有を円滑にするポイント

こうした内容を通じて、人が人を評価するという本質的な難しさを認識しながらも、公正で納得感のある制度を定着させるための実践的なノウハウをお伝えしていきます。社員のモチベーション向上や離職防止、さらには採用力アップに直結するテーマでもありますので、ぜひ最後までお読みいただき、貴社の評価者育成とコミュニケーション改善にお役立てください。


1. 評価制度における「評価者」の役割と責任

1-1. なぜ「評価者」は重要なのか

第2回~第5回のコラムでは、人事評価制度の設計や運用に関わる「仕組み」を中心に解説してきましたが、その仕組みを**最終的に動かすのは「人」**です。評価者の理解度やスキルが足りないまま制度を回すと、以下のような問題が生じやすくなります。

  1. 評価のバラつき・不公平感
    • 同じ評価基準を用いているはずなのに、評価者ごとの解釈が違いすぎる。
    • 社員から「上司によって甘い・厳しいがある」と不満が出る。
  2. 評価面談が形骸化
    • 「どこをどのように評価したか」がうまく説明できず、面談が一方的な通告や雑談で終わってしまう。
  3. 社員のモチベーション低下
    • 公正さが感じられない評価制度には社員が不信感を持ち、努力が報われないと感じてしまう。

逆に、評価者がしっかり制度を理解し、公正な評価 ポイントを意識しながら運用できれば、次のようなメリットを引き出すことができます。

  1. 納得感の高い評価
    • 社員が「なるほど、だからこの評価なのか」と理解でき、モチベーションアップにつながる。
  2. 組織としての一体感
    • 評価制度の目的である「ビジョン・戦略の実行支援」「キャリア開発」を促進しやすくなる。
  3. 管理職・リーダー層のマネジメント力向上
    • 正しく評価し、適切にフィードバックできる管理職は、チームビルディングや人材育成にも長けた存在となる。

このように、評価制度の成否は評価者の育成に大きく左右されると言っても過言ではありません。

1-2. 評価者が果たすべき責任

評価者には大きく分けて、以下のような責任があります。

  1. 評価基準の正確な理解と運用
    • 会社が定めた評価基準(成果・行動・コンピテンシーなど)を正しく把握し、社員一人ひとりに適切に当てはめる。
  2. 公平・公正な視点
    • 自分の好みや先入観、感情的な要素を排除し、客観的な事実や行動、数値に基づいて評価を行う。
  3. 評価結果のフィードバックと成長支援
    • 評価面談で社員の自己評価を聞きつつ、具体的な行動例に基づいて良かった点・改善点を伝え、社員の成長を後押しする。
  4. 評価結果を社内で共有・調整する
    • 校正会議などで他の評価者と情報交換し、評価のブレや解釈の違いを修正する。

こうした責任を果たすためには、制度そのものの知識はもちろん、評価者としてのマインドセットやコミュニケーションスキルが欠かせません。本コラムの後半では、それらを具体的に強化していく方法をご紹介します。


2. 評価者育成が必要な3つの理由

2-1. 評価バイアスを排除するため

人は誰しも、無意識に自分の価値観や先入観に引きずられて判断してしまうことがあります。これを「評価バイアス」と呼びます。たとえば次のようなバイアスが代表例です。

  • ハロー効果(後光効果)
    あるひとつの要素(例:学歴が高い、過去の実績が目覚ましいなど)が強く印象に残り、その人の他の面まで過大評価・過小評価してしまう。
  • 寛大化バイアス
    衝突を避けたい、部下から嫌われたくないという心理から、全体的に高めの評価をつけてしまう。
  • 厳格化バイアス
    逆に「評価は厳しくあるべきだ」という固定観念から、全員に低めの評価をつけてしまう。
  • 近接誤差
    直近の業績や行動のみを重視し、期初や中盤の成果を忘れてしまう。
  • 論理的誤差
    「Aが得意な人はBも得意だろう」という思い込みなど、実際には関連性のない要素を結びつけて評価してしまう。

評価者研修や定期的なトレーニングを通じて、こうしたバイアスが誰にでも起こりうることを学び、可能な限り排除できる仕組みを整えることが大切です。

2-2. 評価基準の解釈の統一

前回(第5回)で触れた校正会議の存在にもあるように、評価基準をどう解釈し、どう点数化するかは評価者によってブレが生じがちです。とくに中小企業では、「上司Aは営業経験が豊富だから成果評価に重きを置きやすい」「上司Bはコミュニケーション力を重視しすぎる」など、属人的な評価が入り込む余地があります。

評価者研修では、具体的なケーススタディを使って同じ事例に対する評価を実際に点数化し、なぜその評価に至ったのかをお互いに話し合うなどの演習を行い、解釈をすり合わせます。これにより、評価基準が単なるマニュアル上の文字列ではなく、**実際の業務で運用できる“生きた基準”**へと落とし込まれていきます。

2-3. フィードバックスキルの向上

評価は「点数をつける」だけが目的ではなく、その結果を社員に伝え、次の行動を促すことが本質です。

  • 「どの部分が良かったのか」
  • 「どの点をどう改善すればさらに成長できるのか」

こうした内容を具体的に伝えるフィードバックスキルがなければ、社員は評価結果から学ぶことができません。評価者が十分なコミュニケーション力を備えていれば、評価のたびに社員がスキルアップし、組織全体の生産性向上につながります。逆に、上司が「なんとなく点数をつけるだけ」「面談が上手くできない」状態だと、評価制度が形骸化するリスクが高まるのです。


3. よくある評価者の失敗例と対策

3-1. 失敗例1:部下との距離感がつかめず甘い評価をしてしまう

ケース

  • 部下から好かれたい、トラブルを避けたいという気持ちが強く、「公正な評価 ポイント」を踏まえきれず、全員に高評価を与えてしまう。
  • 結果的に社員の中に「どうせ甘い評価しか出ない」との認識が広がり、制度を信用しなくなる。

対策

  1. 評価基準に沿った客観的な指標を確認
    • 数値評価や行動指針を再確認し、具体的な事実やデータに基づいて判断する癖をつける。
  2. 評価者自身が査定の理由を説明できるかチェック
    • 校正会議や上長との面談で、「なぜこの点数にしたのか」をしっかり言葉にし、筋が通っているか確認する。
  3. 部下へのフィードバックで“次の目標”を提示
    • 評価が甘くても具体的な改善提案やチャレンジ目標が出ないと、部下の成長につながらない。

3-2. 失敗例2:仕事の成果より好き嫌いで評価してしまう

ケース

  • 気の合う部下や飲み仲間の部下を高く評価し、意見が対立しがちな部下を低く評価してしまう。
  • 社員が「上司に気に入られないと評価されないのか」と組織に不信感を抱くようになる。

対策

  1. 業務記録や行動記録を活用
    • 「いつ、どのような成果(またはミス)があったのか」をExcelやクラウドシステムなどで可視化し、感情だけで判断しない。
  2. 部下へのフィードバックを匿名アンケートで監査
    • 「上司から評価の理由を説明されたか?」「納得できる内容だったか?」をアンケートで回収し、評価者の公正性をチェック。
  3. 校正会議で他の評価者にも評価根拠を説明
    • 「この部下はこういう行動・成果があったので高く評価している」と具体的に示し、私情が混じっていないか検証する。

3-3. 失敗例3:悪い点ばかりを指摘して部下を萎縮させる

ケース

  • 厳格化バイアスの影響などもあり、社員の良いところは見逃してしまい、ミスや課題だけを強調して伝えてしまう。
  • 社員が評価面談を「叱られる場」と捉え、モチベーションが下がる。

対策

  1. ポジティブ・フィードバックのバランスを意識
    • 「サンドイッチ方式」で良い点・改善点・良い点という形で話すなど、ポジティブな話題と課題をバランスよく伝える。
  2. 面談前に“良かった行動”を必ず3つ探す
    • 評価者があらかじめ部下の良いところを洗い出し、面談で具体的に伝える習慣をつける。
  3. 次のアクションを提示
    • 改善点を指摘するだけでなく、「では今後どうすればいいか」を一緒に考え、部下に前向きな気持ちを持ってもらう。

4. 評価バイアスを防ぐための実践的アプローチ

4-1. 事実情報の蓄積

評価バイアスを排除するための最も有効な手段は、客観的な事実情報を蓄積し、それに基づいて評価することです。

  • 目標管理(MBO)の活用
    • 期初に設定した目標達成度を数値や具体的成果物でチェックし、評価の基準とする。
  • 業務日報や週報、タスク管理ツール
    • 日頃から業務進捗や課題対応を記録し、実績データを評価に反映する。
  • 顧客満足度アンケートやクレーム対応履歴
    • 行動評価の一部として、顧客からのフィードバックを評価対象にすることで主観を減らす。

4-2. 複数の視点を取り入れる(360度評価の活用)

中小企業であっても、360度評価(部下、同僚、上司、顧客など複数の関係者から評価を集める仕組み)を簡易的に取り入れるケースが増えています。評価者一人のバイアスが大きい場合、複数の視点が入ることでブレを補正できる利点があります。

  • 導入方法の例
    1. 社員がアンケートフォームを送信→上司・同僚・部下・顧客が回答→人事や評価者が集計→総合スコアを参考に最終評価。
    2. フォーマルな運用が難しい場合、特定の部下や同僚にヒアリングし、評価者が補足情報として参考にする形でもよい。
  • 注意点
    • 360度評価をフルスケールで実施すると、手間と時間がかかるため、会社の規模やリソースを踏まえて段階的に導入することが望ましい。
    • 過度に「人気投票」的にならないよう、質問項目を工夫し、あくまで行動や成果に関する情報を得るというスタンスを徹底する。

4-3. 定期的なレビューと改善

評価バイアスを排除するには、定期的に運用状況をレビューし、評価者同士でフィードバックし合う体制が欠かせません。

  • 校正会議
    • 前回コラム(第5回)でも解説しましたが、評価者同士が集まり、評価結果の理由や根拠を共有し合う場を設定する。
  • 評価者自身のセルフチェック
    • 「今期は特定の部下に点数を甘くしすぎてないか?」などを振り返るためのチェックリストを作成。
  • 人事担当・上層部によるモニタリング
    • 人事部や経営層が最終的な評価分布を確認し、極端な偏りや毎回同じ問題が繰り返されていないかを監査する。

5. 評価者研修・育成プログラムの設計

5-1. 研修内容の例

評価者研修は、一度きりではなく定期的・段階的に行うことが望ましいです。中小企業では回数や時間を確保するのが難しい場合もありますが、短時間のワークショップを何回か開催するだけでも効果はあります。

  1. 評価制度の目的・概要の再確認
    • なぜ当社が評価制度を導入しているのか、評価結果をどのように活用するのかを再度共有する。
  2. 評価基準の読み解き方とケーススタディ
    • 実際に想定事例(Aさんは売上目標達成率90%であるが、顧客クレームが頻発していた等)を出し合い、どのように点数化・評価するかをグループディスカッションする。
  3. 評価バイアスとその対策
    • 代表的なバイアスを知り、自分自身の考え方にも当てはまるかをセルフチェックする。
  4. フィードバック・面談スキル
    • ロールプレイで評価面談をシミュレーションし、上司役・部下役に分かれて実践し、講師や同僚からフィードバックを受ける。
  5. 校正会議の進め方
    • 評価結果をどのように共有し、どうすり合わせを行うか、具体的な進行手順や発言方法を確認する。

5-2. OJTと組み合わせた育成

研修室での座学やロールプレイだけではなく、実際の評価運用期間にメンター的な人事担当者や先輩管理職がフォローする仕組みも効果的です。

  • メンター制
    • 新任の評価者に対して、経験豊富な評価者が定期的に相談相手となり、評価面談で困っていることやバイアスが入りそうな点をディスカッションする。
  • 評価実施後の振り返り
    • 評価期間終了後に、上司同士で「今回の評価面談でうまくいった点・課題」を共有し、次回に活かす。

6. コミュニケーション術で公正な評価を根付かせる

6-1. 社内での情報共有・説明会の実施

公正な評価を行うためには、評価者だけでなく社員全体が制度や評価基準を理解し、評価に関する情報をオープンに共有することが大事です。とくに中小企業は経営者やトップマネジメントとの距離が近いぶん、全社員が直接コミュニケーションできる利点を活かしましょう。

  • 全社員向け説明会
    • 新しい評価基準や運用ルールができたタイミングで、全社員を対象に説明会を開き、質疑応答を行う。
    • 管理職が登壇し、実際の運用イメージを具体的に伝えることで、不安や疑問を解消する。
  • FAQやマニュアルの整備
    • 評価制度の目的・フロー・評価項目・昇格要件などを整理したドキュメントを社内共有フォルダやイントラネットに掲載。
    • 社員がいつでも参照できるようにしておく。

6-2. オープンなフィードバック文化の醸成

評価制度を機能させるには、社員が普段からオープンにフィードバックを受けたり、議論したりできる文化を醸成することが理想です。半年や年1回の面談だけが評価の場ではなく、日常的に上司・部下がコミュニケーションを取る中で改善が行われるようになると、評価の質も自然と高まります。

  • 1on1ミーティング
    • 週1回や月1回など、短時間で上司と部下がマンツーマンで話し合う機会を作り、業務進捗や課題、目標に関してフィードバックを行う。
  • 社内SNSの活用
    • 社員同士が仕事上の成果や困りごとを共有しやすい環境を作ることで、リアルタイムでアドバイスや承認が得やすくなる。
  • 評価結果以外のフィードバックも重視
    • 「ありがとう」「ナイスアイデア!」など、日常的にポジティブフィードバックを交わす習慣をつける。これが組織全体の心理的安全性を高める土台になる。

6-3. 多様な働き方への対応

リモートワークやフレックスタイムなど、多様な働き方が浸透する中で、「評価者が社員を直接観察できる時間が減る」といった問題も生じやすくなっています。ここでもコミュニケーション手段の工夫が必要です。

  • オンライン面談・1on1の活用
    • リモートワーク中でもビデオ会議を使って定期的にフェイス・トゥ・フェイスで話す。
  • 成果物や作業ログの共有
    • 実績データをクラウドで管理し、随時確認できるようにする。必要ならスクリーンショットや録画機能を使って客観的な証拠を集める。
  • チャットツールでの細かいすり合わせ
    • 業務進捗や困りごとなどをリアルタイムで発信し、上司・同僚からすぐレスポンスをもらう文化を作る。

7. 評価者同士の連携とフォローアップ

7-1. 評価者同士の情報交換

評価者間のコミュニケーションが活発だと、バイアスが生じにくくなるだけでなく、ベストプラクティスの共有も進みます。たとえば、評価面談で工夫した点や、部下のモチベーションを高めた成功事例などを管理職会議などでシェアすることで、組織全体が評価制度をより上手に活用できるようになります。

  • 月例管理職会議でのトピック
    • 「最近の部下との面談で気づいた課題」「優秀な社員をさらに伸ばすための仕組み」などをテーマに情報交換。
  • 評価者用チャットグループ
    • チームリーダーやマネージャーだけが参加するチャットグループを作り、日頃から評価に関する悩みやアイデアを共有。

7-2. 定期的なフォローアップ面談

評価者は自分が評価するだけでなく、上位者からのフォローアップやアドバイスを定期的に受けることが大切です。たとえば、人事責任者や役員、または経営者が評価者と面談し、「最近の評価業務で困っていることは?」「面談時にどんな課題を感じる?」とヒアリングを行う場を設けると、問題を早期にキャッチできます。

7-3. PDCAサイクルでの継続改善

人事評価制度は、生きた組織で機能し続けるために常に見直しと改善が必要です。評価者育成に関しても、導入後に一度研修をやって終わりではなく、Plan-Do-Check-Actのサイクルでブラッシュアップを続けます。

  1. Plan(計画)
    • 「次の評価期間では、評価者同士で共有するケーススタディを増やそう」と計画を立てる。
  2. Do(実行)
    • 実際にケーススタディ演習を増やした研修や会議を実施。
  3. Check(評価)
    • 研修を受けた評価者の実際の評価結果にブレが少なくなったか、人事部や経営陣がモニタリング。
  4. Act(改善)
    • さらに必要な施策を検討し、次の研修や仕組みに落とし込む。

8. 次回以降の展望

今回(第6回)のコラムでは、「評価者の育成」と「コミュニケーション術」を中心に、人が決める評価の公正性をいかに高めるかを深く考えてきました。

  • 評価者のマインドセットと具体的なスキル
  • 評価バイアスへの対処法
  • 失敗例を踏まえた実践的なアプローチ
  • 社内コミュニケーションや情報共有の工夫
  • OJTや定期研修、校正会議などを組み合わせる評価者育成プログラム

これらはすべて、中小企業が限られたリソースの中でも「公正で納得感のある評価」を実現し、組織を活性化させるために欠かせないポイントといえます。

次回のコラム(第7回)では、**「導入して終わりにしない! フォローアップで制度を育てる方法」**というテーマで、評価制度を長期的に機能させるための改善サイクルや社員の声を取り入れる方法、導入初期のトラブルシューティングなどに焦点を当てます。評価制度は一度作ったらゴールではなく、運用しながら継続的にブラッシュアップすることで、本来の効果を最大化できるものだからです。

ぜひ引き続きコラムをご覧いただき、貴社の人事評価制度をより強固で使いやすい仕組みへと育てていってください。


9. まとめ

本コラムの内容を改めて振り返ると、以下のポイントが重要です。

  1. 評価制度を最終的に動かすのは“人”
    • どんなに評価基準や運用フローが整備されていても、評価者が適切に運用できなければ制度は機能しない。
  2. 評価者育成が欠かせない3つの理由
    • 評価バイアスの排除
    • 評価基準の解釈の統一
    • フィードバックスキルの向上
  3. よくある評価者の失敗例と対策
    • 甘い評価、好き嫌いによる判断、ミスの指摘ばかりなどのパターンを避けるには、客観的データと丁寧なコミュニケーションが鍵。
  4. 評価バイアスを抑える具体策
    • 事実情報の蓄積(客観データの活用)
    • 360度評価や複数の視点を導入する(規模や状況に応じた取り入れ方)
    • 定期的なレビュー(校正会議、評価者研修)で改善を続ける
  5. 評価者研修・育成プログラムの設計
    • ケーススタディ・ロールプレイを活用して、評価基準の使い方やフィードバックの仕方を実践的に学ぶ。
    • OJTやメンター制と組み合わせると効果的。
  6. コミュニケーション術で公正な評価を根付かせる
    • 全社員への情報共有・説明会
    • オープンなフィードバック文化と心理的安全性の醸成
    • リモートワークなど多様な働き方への対応策
  7. 評価者同士の連携とフォローアップ
    • 評価者同士が経験や悩みを共有し合い、継続的にブラッシュアップする
    • 経営トップや人事担当が定期的にモニタリングとサポートを行う

公正な評価は、社員の定着や採用力向上だけでなく、組織全体の生産性と企業文化にも大きく影響します。「評価は人が決める」という当たり前の事実を見逃さず、評価者育成とコミュニケーション施策に力を入れることで、より強固で効果的な人事評価制度をつくり上げていきましょう。


JINJIPACKからのご提案

中小企業で人事評価制度を運用するうえで、評価者の育成社内コミュニケーションは非常に重要なテーマです。しかしながら、「どのような研修を何回行うべきなのか」「評価バイアス対策を具体的にどう進めるのか」「オンラインでのコミュニケーションが増えた今、どんなツールや方法が最適か」など、悩みは尽きないかもしれません。

私たちJINJIPACKは、こうした中小企業特有の課題に寄り添い、制度設計から導入支援、そして運用フォローアップまで一貫してサポートしています。

  1. 制度設計
    • 組織・人事コンサルティング | JINJIPACK
      貴社のビジョン・事業戦略、組織体制を踏まえた評価制度・等級制度の基本設計を行います。評価者が理解しやすいシンプルな構成から始めるなど、中小企業に合わせた無理のないプランを提案します。
  2. 制度導入
    • 制度導入 | JINJIPACK
      評価者研修や社員説明会、評価シートやシステムの導入など、具体的な運用開始までのステップを伴走サポート。ケーススタディ演習やロールプレイなど、実践重視の研修プログラムを用意しており、評価バイアス対策コミュニケーション術も包括的に学べます。
  3. 制度運用
    • 制度運用 | JINJIPACK
      制度導入後のフォローアップや定期的な見直しのサポートを通じて、評価者間の情報共有校正会議の進行、トラブルシュートなど、現場で発生する様々な問題を一緒に解決していきます。オンラインツールを使った支援も可能なので、リモート環境でもスムーズにフォローアップが受けられます。

JINJIPACKでは、「評価は人が決める」という観点を大切にしながら、評価者が負担なく成長できる仕組みづくりを重視しています。中小企業ならではのアットホームな社風や迅速な意思決定のメリットを活かしつつ、公正で納得感のある評価制度を定着させたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

おわりに

次回のコラム(第7回)では、さらに「導入後のフォローアップ」に焦点を当て、評価制度を形骸化させずに磨き続ける方法、導入初期のトラブル事例と対処法などを具体的に解説します。評価制度は、継続的な改善とコミュニケーションによってこそ真価を発揮する仕組みですので、どうぞ次回もお楽しみにご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。社員一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、組織全体を強くするためにも、評価者育成とコミュニケーション術をしっかり磨いていきましょう。

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