中小企業向け人事評価制度導入ガイド|第5回 評価制度の運用ルール

評価の流れをスムーズに! 運用プロセスとルール徹底解説


目次

はじめに

これまでのコラムでは、人事評価制度の設計段階にフォーカスして、「なぜ中小企業に評価制度が必要なのか」「等級制度によるキャリア開発の重要性」「評価基準の作り方」などを詳しくご紹介してきました。特に第4回では、成果評価・行動評価・コンピテンシー評価といった項目の選定から、公正な評価を行うためのポイント、具体的な評価基準づくりの流れを解説してきました。

しかし、いくら優れた設計や評価基準があっても、実際に運用がスムーズに進まないと、人事評価制度は効果を発揮しづらくなります。

  • 社員に評価制度が浸透しない
  • 評価者が忙しく、面談やフィードバックの時間が確保できない
  • 評価結果の取り扱いが曖昧で、社員に納得感が生まれない

これらは「運用プロセス」や「評価ルール」が不十分なまま制度を回そうとしたときに起きがちな問題です。

そこで本コラム(第5回)では、「評価の流れをスムーズに! 運用プロセスとルール徹底解説」と題し、評価を実施するうえでの具体的なステップやルール設定のコツ、そして社員や評価者にどのように周知・活用してもらうかを詳しく紹介します。

  • 評価サイクルの設定(年1回 or 半期ごと or 四半期ごと など)
  • 目標管理との連動
  • 評価面談の進め方
  • 評価者同士のすり合わせ(校正会議)の方法
  • 評価結果のフィードバックや社員の納得感向上策
  • 運用上のトラブル・課題とその解決策

これらを網羅的に押さえておけば、「評価制度は作ったものの、うまく機能しない」という状況を回避しやすくなり、採用・定着効果や社員のモチベーション向上にもしっかりつなげられるでしょう。ぜひ最後までお読みいただき、貴社の評価制度をスムーズに運用していくためのヒントを見つけていただければ幸いです。


1. なぜ運用プロセスとルールが重要なのか

1-1. 設計が完璧でも“運用”が機能しなければ意味がない

第2回・第3回・第4回のコラムでは、人事評価制度の全体設計や等級制度、評価基準づくりに焦点を当ててきました。これらは企業が「何を、どのように評価するか」という根幹部分を決める作業なので、当然ながら大変重要です。しかし、どれほど素晴らしい制度を設計しても、実際に動かす段階で混乱が生じると、社員は評価制度に不信感を抱きやすくなります。結果として、定着率や採用力を高めるどころか逆効果になってしまう可能性があるのです。

1-2. 運用ルールが曖昧だと起こりうるトラブル

運用ルールが曖昧なまま評価を開始すると、以下のようなトラブルが起きやすくなります。

  1. 評価時期や評価基準を巡る混乱
    • 「評価期間はいつからいつまで?」「途中入社の社員はどう評価する?」
    • 「目標設定をし忘れていた」「面談が忙しくてすっ飛ばされた」
  2. 評価結果への不満
    • 社員側から「自分の評価が低い理由が分からない」という声が上がる。
    • 評価者側が「どうやって点数をつければいいか分からない」となり、主観に頼りがちになる。
  3. 評価者間のバラつき
    • 部署や上司によって評価の厳しさが違いすぎる。
    • 「公正な評価 ポイント」が社内で共有されておらず、評価の公平性が担保されない。

このように、運用ルールが明確でないことが、社内の混乱や社員の不満につながりやすいのです。

1-3. スムーズな運用で得られるメリット

一方で、運用プロセスとルールを明確にし、評価サイクルが定着していけば、以下のような大きなメリットが期待できます。

  1. 社員の納得感とモチベーション向上
    • 「自分は何をすれば評価されるか」が分かりやすくなるため、前向きに取り組む社員が増える。
  2. 評価者の負担軽減とスキルアップ
    • 定型的なプロセスとルールがあるため、評価者が迷わず実施できる。
    • 面談やフィードバックの質が上がることで、管理職のマネジメントスキルも向上する。
  3. 採用力・定着率向上
    • 「しっかり運用されている評価制度がある会社」というイメージがあると、求職者からの応募意欲や社員の定着意欲が高まる。
  4. 組織全体の生産性・業績向上
    • 目標管理やフィードバックを通じて、社員が常に成果を意識しながら行動するため、結果的に業績にも好影響を与える。

「人事評価制度 中小企業」で検索しても、運用がうまくいかずに制度が形骸化してしまった例は少なくありません。逆に、運用を丁寧に行うことで組織を強くしている中小企業の成功事例も多々あります。次章からは、運用プロセスとルールづくりのポイントを詳しく解説していきます。


2. 評価サイクルをどう設定するか

2-1. 評価頻度:年1回か、半期評価か、四半期評価か

中小企業で人事評価制度を運用するにあたり、評価の頻度(サイクル)をどうするかは大きな検討事項です。代表的なのは以下の3パターンでしょう。

  1. 年1回
    • 一般的には「年度末にまとめて評価」するが、評価の機会が少ないため、フィードバックタイミングを逃しやすい。
    • 評価者・人事担当の負担は半期・四半期よりは軽い。
  2. 半期(年2回)
    • 多くの企業が採用するスタンダードなサイクル。
    • 1回あたり6ヶ月分の成果や行動を振り返り、面談を実施するため、社員も改善のチャンスを年2回得られる。
  3. 四半期(年4回)
    • よりこまめに目標設定・成果確認を行うため、スピード感のある組織運営に適している。
    • 評価回数が多いぶん評価者の負担も大きく、面談やシート作成が煩雑になりがち。

中小企業の場合、半期評価を採用するケースが最も多いです。理由としては、運用の負荷とフィードバック頻度のバランスが取りやすいためです。ただし、事業がプロジェクトベースで動いている会社や、短期的なKPIが重要視されるベンチャー企業などでは四半期ごとの評価を導入する例もあります。

2-2. 評価スケジュールの明確化

サイクルを決定したら、実際にいつ、どのように評価を進めるのかを年間スケジュールとして明示しましょう。たとえば、半期評価であれば以下のように設定します。

  1. 期初(4月、10月)
    • 社員が自己目標を設定し、上司と合意する(目標管理=MBOなどを利用するケースも)
    • 前期の評価結果やフィードバック内容を踏まえて、新たな目標を作成
  2. 中間(6月、12月)
    • 必要に応じて中間面談を実施し、進捗確認と目標の微調整を行う
    • ここでトラブルや課題がある場合は早期に対策
  3. 期末(9月、3月)
    • 社員が自己評価を行い、上司が評価シートを記入
    • 評価者間の校正会議を実施し、評価のブレを最小化
    • 面談を通じて評価結果を社員へフィードバック
  4. 結果反映・次期目標設定
    • 評価結果を本人の昇格や昇給・賞与に反映(賃金制度と連動させる場合)
    • 次期目標を設定し、次の評価サイクルに備える

このスケジュールを社内全体に共有し、管理職や社員が自らスケジュールを管理できるようにすると、評価の進行がスムーズになります。

2-3. 評価期間中のルール設定

また、評価期間中のルール設定も重要です。たとえば途中入社した社員の取り扱いをどうするか、育児休業・長期休暇取得者の評価はどうするかといったルールを、評価制度運用マニュアルの中で明示しておくと、後々のトラブルを回避できます。


3. 目標管理(MBO)と評価の連動

3-1. 目標管理(MBO)のメリット

先ほども少し触れましたが、評価制度と目標管理(MBO)を連動させると、社員一人ひとりが「どんな成果・行動を目指すか」を明確に意識しやすくなります。特に中小企業では、社員一人ひとりの仕事範囲が広いことが多く、「何が自分の担当領域で、どこまで責任を持つのか」が曖昧になりがちです。そこで、目標管理を取り入れることで以下のメリットを得られます。

  1. 社員の主体性向上
    • 上司から一方的に与えられた目標ではなく、社員自身が考えた目標を合意のうえ設定するため、当事者意識が高まる。
  2. 成果評価との親和性が高い
    • 数値化できる目標であれば、評価基準にそのまま使いやすい。
  3. 行動評価やコンピテンシー評価にも応用可能
    • 「目標達成のためにどんな行動をとったか」「どのような能力を発揮したか」を定期的に振り返ることで、プロセス評価も行いやすくなる。

3-2. 目標設定のポイント

ただし、目標管理を形骸化させないためには、目標設定の段階でいくつかのポイントを押さえておく必要があります。

  1. SMARTの原則(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)
    • 目標は具体的で、測定可能、達成可能性があり、企業方針との関連があり、期限が明確であることが望ましい。
  2. 上司と社員の対話を重視
    • 目標は一方的に割り当てず、面談やミーティングを通じて相談しながら決める。
  3. 業務の優先度や難易度を考慮
    • あまりにも難易度が高い目標を設定してしまうと、社員が萎縮したり途中でモチベーションを失う恐れがある。
  4. 数値目標+行動目標の併用
    • 「売上額の達成」などの定量目標だけでなく、「顧客満足度を高めるために月1回ヒアリングを実施」といった行動面の目標も組み合わせるとバランスが良い。

3-3. 目標管理とフィードバック

MBOを活かすには、期初(目標設定)→ 中間(進捗確認)→ 期末(評価と次期目標設定)という一連の流れの中で、上司からのフィードバックが欠かせません。特に中間時点での面談があると、軌道修正が必要なときに早めに手が打てます。
「気づいたら期末になっていた」「結局評価のときしか話し合わない」という状態だと、社員は“評価されるだけでアドバイスはない”
と感じ、不満や不安を抱きやすくなります。


4. 評価面談を円滑に行うためのポイント

4-1. 面談の重要性

「評価面談」は、評価制度運用の中でも社員が最も関心を持つイベントと言っても過言ではありません。面談の質が社員の納得感やモチベーションに大きく影響し、「この会社はしっかり見てくれている」と思えるのか、それとも「結局、形だけの面談で終わってしまうのか」が分かれ道になります。

4-2. 面談の前準備

評価面談を成功させるためには、評価者と被評価者の双方が準備をしっかり行うことが重要です。

  • 被評価者(社員):
    • 自己評価シートを期末に書き込み、自分の取り組みや成果を客観的に振り返る。
    • 質問や疑問点を事前にまとめておき、面談時に上司とディスカッションできるようにしておく。
  • 評価者(上司):
    • 被評価者の自己評価シートや業務データを確認し、具体的なフィードバックポイントを整理する。
    • 評価基準 作り方(第4回コラム参照)に基づき、公正な評価 ポイントを意識してスコアをつける。
    • 面談で伝えるべきこと(ポジティブ面・改善点・次期目標)をメモしておく。

4-3. 面談の進め方

実際の面談では、「対話」が重要です。一方的に「あなたの評価はこうでした」で終わらせるのではなく、社員の自己評価や考えを聞きながら、上司が評価の根拠や具体的な改善案を提示します。面談時間は社員によって異なりますが、1人あたり30分〜1時間程度が一般的です(評価頻度や会社規模によって調整)。

  1. 挨拶・アイスブレイク: 面談の目的を再確認し、「評価結果だけを伝える場ではなく、次のステップを共に考える場」であると伝える。
  2. 社員の自己評価や意見を聞く: 期初に設定した目標をどう取り組んだか、何が上手くいき、どこに課題があったのかを本人の言葉で説明してもらう。
  3. 上司からの評価コメント: 良かった点・努力が認められる点・期待以上だった点などを具体的に伝える。改善の必要がある点についても、事実や行動に基づいて指摘する。
  4. 次のアクションプランや目標設定: 改善や成長のためにどんな行動をとるべきか、次期目標はどうするかなどを話し合う。
  5. フォローアップ計画: 今後どのようなタイミングで進捗確認をするか、必要なサポートは何かを具体的に決める。

4-4. 心理的安全性とフィードバックの質

面談では**「心理的安全性」**を確保することも重要です。社員が本音や失敗を語れる雰囲気がないと、上司に対する不信感や防衛本能が働き、建設的な話し合いができません。成果だけでなく失敗の原因や苦労についても共有し合い、前向きな解決策を模索する姿勢を示すことで、社員は安心して自分の考えを話せるようになります。

  • フィードバックの質を高めるコツ:
    1. 具体的な事実や行動に触れる(「~した結果、~という効果が出たね」など)
    2. 過去のミスに終始せず、未来志向(どうすれば次は改善できるか)を中心に話す
    3. 社員が自分で考えられるよう「どう思う?」「何があればもっとやりやすかった?」と問いかける

5. 評価者同士のすり合わせ(校正会議)

5-1. なぜ校正会議が必要か

校正会議(キャリブレーション会議)とは、評価が一通り集まった段階で、評価者が集まり評価のバラつきを修正する作業を指します。中小企業でも部署が複数あり、それぞれの部署長が社員を評価していると、「ある部署は甘い、別の部署は厳しい」という事態が起こりがちです。これでは社員の不満や不公平感が募り、組織全体の士気を下げかねません。

5-2. 校正会議の進め方

校正会議の進め方の一例は以下のとおりです。

  1. 評価結果の共有
    • 各評価者が担当社員の評価結果(仮スコア)を一覧にして持ち寄る。
    • 必要に応じて、自己評価シートや業務実績データなども参照できるようにする。
  2. 相対評価の調整
    • 同じ役職や同じ仕事の領域で、大きく評価が違う社員がいる場合、上司間で「どうしてこの差が生まれたのか」を話し合う。
    • 本来は絶対評価が望ましいですが、中小企業の場合人数が少ない分、ある程度の相対的なバランスも重要になる。
  3. 評価基準の再確認
    • 「公正な評価 ポイント」が共有されているかを確認し合い、特定の項目で解釈の違いがないかを確認する。
  4. 最終調整
    • 必要に応じて評価スコアを微調整し、組織として納得できる形に近づける。
  5. 今後の課題と改善策
    • 「今回の校正会議で多かった評価項目の誤解」など、次回に向けて運用ルールの改善や評価者研修の必要性を洗い出す。

校正会議を定期的に実施することで、評価者間の認識ギャップを徐々に埋め、公正な評価が定着していきます。


6. 評価結果の取り扱いと社員への還元

6-1. 賃金制度・賞与制度との連動方法

多くの企業では、評価結果を給与や賞与、昇格などに反映させることで、社員のモチベーションを高め、納得感を生む仕組みを整えています。ただし、本コラムの冒頭でお伝えしているように、本シリーズの範囲では「賃金制度」は詳細に取り扱わないため、ここでは簡単に概要を紹介します。

  • 評価結果を賞与に反映する: 半期ごとの成果評価を元に賞与額を変動させる。
  • 評価結果と昇格・昇給: 一定以上の評価を得た社員を次の等級に昇格させ、給与テーブルを変更する。
  • 一括反映か、段階的反映か: 評価結果をすぐに賞与や昇給に反映するか、次期以降に段階的に反映するかは企業の方針による。

連動方法を明確化し、社員に周知しておくことで「評価結果が自分の処遇にどう影響するのか」が分かり、評価制度への納得感が高まります

6-2. 評価結果フィードバックの徹底

評価面談での口頭フィードバックだけでなく、評価シートや自己評価シートへのコメントなどの形でも結果をフォローすることが重要です。特に社員が「なぜこの評価なのか」を理解できるよう、具体的なコメントを入れる習慣をつけましょう。

  • :
    • 「営業目標100%達成だけでなく、チームメンバーのノウハウ共有にも積極的に取り組んでいた点を高く評価した」
    • 「クレーム対応は迅速だったが、報告がやや不足気味で、他部署への展開が遅れた部分は今後の改善余地」

このように具体例を交えて評価理由を説明すると、社員は自分の強みと弱みを客観的に把握しやすくなり、次の行動につなげやすくなります。

6-3. 評価結果とキャリア開発

前回までに触れたように、等級制度キャリアパスと評価結果を連動させる仕組みも効果的です。評価結果が次のステップ(昇格・異動・専門職コースへのチャレンジなど)にどう結びつくのかを明示すれば、社員の成長意欲をさらに引き出せます。

  • :
    • 「リーダー等級に昇格するには、マネジメントに関する評価項目で平均3.5以上が必要」
    • 「専門職コースへの転身には、技術面のコンピテンシー評価で4以上を2期連続で獲得すること」

社員が「自分のキャリアをどう築くか」を考えやすくなるため、長期的な定着率アップにもつながります。


7. 運用上のトラブル・課題と対処法

いざ評価制度を運用し始めると、さまざまな場面で想定外のトラブルや課題が浮上することがあります。ここでは代表的な例と、その対処法を紹介します。

7-1. 面談時間が確保できない

問題点

  • 中小企業では管理職や経営者が多忙で、面談のスケジュールを組むだけで大変
  • 社員の人数は少ないが、多岐にわたる業務を抱えていて評価の準備が進まない。

対処法

  1. 評価時期を明確にカレンダー化: 半期の始まりなど、社内共通のスケジュールを作り、評価面談の期間をあらかじめ確保する。
  2. 面談時間を短縮し、フォーマット化: 面談時間を30分以内に設定する、自己評価シートにある程度の情報を記入してもらうなど、効率化を図る。
  3. オンライン面談の活用: 在宅勤務や出張が多い場合はWeb会議システムを使うなどして柔軟に対応する。

7-2. 評価者による評価基準の解釈違い

問題点

  • 評価基準はあるが、実際に点数をつけると評価者間で大きくブレる
  • 社員が自部署の上司の評価に不満を持ち、「あの部署は甘いのに、うちは厳しい」と不公平感を募らせる。

対処法

  1. 評価者研修の実施: 「公正な評価 ポイント」を共有し、具体的なケーススタディを使って模擬採点を行う。
  2. 校正会議の定期実施: 第5章でも触れたように、評価者同士で評価結果を擦り合わせる機会を必ず設ける。
  3. 評価基準そのものの見直し: 運用してみて、曖昧な項目が多い場合は、次回の評価前に基準を修正する。

7-3. 社員が評価制度に興味を持たない

問題点

  • 評価制度の説明が不十分で、社員が「どうせ形だけの制度」と思ってしまい、モチベーションに結びつかない。
  • 「人事評価制度 中小企業」で検索しても、ネガティブな情報ばかり入手して半ば諦めムードになっている社員も。

対処法

  1. 会社のビジョンやキャリア開発との関連をしっかり説明: 評価制度が「単なる査定」ではなく、社員が成長し、キャリアアップするための仕組みであることを繰り返し伝える。
  2. 評価結果を待遇・昇格・キャリア支援に反映: 成果がきちんと処遇やキャリアアップの機会に直結する仕組みを見せることで、社員の意欲を高める。
  3. 社内広報や説明会の活用: 制度導入前や導入初期に、分かりやすい資料や説明会を実施し、社員の理解を深める。

7-4. 制度が形骸化してしまう

問題点

  • 導入当初は盛り上がったが、半年・1年経つと誰も評価シートをまじめに書かない。
  • 「忙しい」「仕事が立て込んでいる」などの理由で面談や校正会議がないがしろに。

対処法

  1. 経営トップのコミットメント: 社長や役員が「評価制度こそが会社を成長させる仕組み」と理解し、定期的に進捗をチェックする。
  2. PDCAサイクルの導入: 評価制度も一度作って終わりではなく、Plan-Do-Check-Actの考え方で定期的に見直し・改善を行う。
  3. 小さな成功事例の社内共有: 「評価制度のおかげでこういう成果が出た」「フィードバックが役立った」というエピソードを共有し、ポジティブなムードを醸成する。

8. 次回以降の展望

ここまで、評価制度の運用プロセスとルールを軸に、具体的なステップや注意点、そしてトラブルシュートの方法などを紹介してきました。評価のサイクル設定、目標管理との連動、面談や校正会議の進め方など、一通り押さえておけばスムーズに制度を回せるでしょう。

次回のコラム(第6回)は、「評価は人が決める! 公正を保つ評価者育成&コミュニケーション術」というテーマで、評価者側の研修やスキルアップ、社内コミュニケーションについてさらに深堀りします。運用のカギを握るのは「評価者のスキル」と「組織のコミュニケーション文化」といっても過言ではありません。せっかく制度を整備しても、評価者がその意図を正しく理解できていなければ、公正性を欠いた評価になってしまいます。

中小企業だからこそ、社員一人ひとりの顔が見える分、評価者のちょっとした偏見や主観が大きなトラブルに発展するリスクもあります。第6回ではそのリスクを最小化し、組織を円滑に動かすための具体的なノウハウをお伝えする予定ですので、ぜひ引き続きご覧ください。


9. まとめ

それでは、本コラムの要点を再度振り返っておきましょう。

  1. 運用プロセスとルールが曖昧だと、人事評価制度は機能しない
    • どれだけ良い評価基準があっても、具体的な運用の流れやルール設定がなければ形骸化しやすい。
  2. 評価サイクルの設定がカギ
    • 年1回、半期(年2回)、四半期(年4回)など、会社の事情に合わせた頻度を決める。
    • スケジュールを明確化し、全社員に共有することで評価の流れがスムーズになる。
  3. 目標管理(MBO)との連動で社員の主体性を高める
    • 定量目標+定性目標を組み合わせ、目標設定→進捗確認→評価という流れを定着させる。
  4. 評価面談は“対話”が重要
    • 社員の自己評価をしっかり聞き、具体的なフィードバックと改善アドバイスを行う。
    • 心理的安全性を保ち、社員が本音を話せる雰囲気づくりを心がける。
  5. 校正会議で評価者間のブレを修正
    • 評価者同士が集まって評価結果を比較し、不当なばらつきがないかをチェックする。
    • 「公正な評価 ポイント」を社内で共有し続けることが大切。
  6. 評価結果の活用とフォローアップ
    • 賃金・昇格への反映だけでなく、キャリア開発やスキルアップの指針としても活かす。
    • 評価の理由を明確に伝えることで、社員の納得感と成長意欲が高まる。
  7. 運用上のトラブルはPDCAサイクルで改善
    • 面談時間が確保できない、評価者の解釈がバラバラなどの問題は、ルール整備や研修で対処可能。
    • 経営トップのコミットメントと、小さな成功事例の共有が制度定着のカギ。

運用プロセスとルールをしっかり構築し、継続的に改善していくことで、評価制度は社員の成長と組織の活性化を実現する強力なツールになります。次回の第6回コラムでは、評価者育成やコミュニケーション術に着目し、さらに深い運用ノウハウを学んでいきましょう。


JINJIPACKからのご提案

これまでのコラムを通じて、「人事評価制度 中小企業」における設計・運用のポイントを詳しくご紹介してきましたが、実際に制度を本格運用するとなると**「これで本当に合っているのだろうか?」「自分たちだけで回せるか不安…」**と感じる方も少なくないでしょう。そこで、JINJIPACKでは以下のサービスを通じて、貴社の人事評価制度をスムーズに運用するための総合的なサポートを行っています。

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次回の第6回コラムでは、さらに評価者の育成コミュニケーション術にスポットを当てて、中小企業ならではの組織課題を解消するヒントをお届けします。引き続き、JINJIPACKのコラムをお楽しみください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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