人事評価制度とは
従業員を正当に評価するための仕組みで、一般的に能力評価・業績評価・情意評価の3つから評価をします。
能力評価では従業員の能力を総合的に判断します。ここで指標となるのは企画やプレゼン・事務処理の能力などです。これらを総合的に判断して、数値として能力を認識します。ただ能力評価においては、努力や過程を見ることも大切であり、従業員の人となりを評価してあげることも重要です。
業績評価は従業員の目標設定をサポートするメリットがあります。売上額や業務件数、目標の達成度などは数値化できます。数値はモチベーションを生み出す原動力になり、さらに企業の永続的な黒字化にもつながるものです。また目標達成に要した時間、チームにどのくらい貢献したか、なども業績評価で見ておきたいポイントです。
情意評価は従業員が会社に対してどのくらい貢献しているか、意欲を持って仕事に臨めているか、などを評価します。勤務態度は適切か、積極性を持って業務を遂行しているか、ルールの順守しているか、などをチェックします。伸びる企業の特徴は、リーダーシップを発揮する人材が多いことです。こうした人材は積極性があり、また企業への貢献度も高いため、企業にとって大きな財産となります。
中小企業の人事評価制度の現状
大手は人事評価制度を導入し、十分に活用できているケースが多いです。一方で中小企業の人事評価制度に関しては、制度が運用できていないケースが少なからず見受けられます。中小企業は大手企業と比べて、人事考課制度が機能していない傾向が強いです。成果やスキル、やる気などを明確に判断する基準が存在しなければ、人事では相手の好き嫌いに重きが置かれてしまう可能性があります。同様の結果を出しているのに、上司から好かれている人は出世でき、嫌われている人は出世できない状況は問題ありです。企業が従業員を評価するときは、人間性の好き嫌いよりも、結果を見ていく必要があります。
従業員を正当に評価することができなければ、評価されない人材は離職を考えることになりかねません。離職者が頻繁に出てしまう状況は、企業にとって大きなリソースの流出となります。出入りが激しい職場は人材育成が進まず、結果的に企業力が伸びない問題が発生します。実際に離職率は大手企業より中小企業のほうが高く、人材が育ちにくい傾向が強いです。離職率を下げていくという意味でも、制度の健全な運用が課題になります。人事評価の基準を定めて、人事の裁量だけで決定してしまうことがないように人事評価制度を運用しましょう。
人事評価制度の導入率が低いのも中小企業の課題です。厚生労働省の雇用管理調査では、人事評価制度を導入している企業は全体の51.0%となっています。この割合は人員規模によって大きく異なり、5,000人以上の規模では98.3%にもなります。つまり大手企業のほとんどは人事評価制度を導入し、人材を正当に評価する基盤を整えているのです。それにより従業員が離職しにくい環境づくりができるわけです。100人以上の規模では73.7%が導入しており、5,000人規模の企業と比べると顕著に低くなっています。さらに30~99人規模では39.4%まで下がるため、人員規模と人事評価制度の導入率が比例関係にあることがわかるでしょう。
制度の導入率が低い一因としては、人員が少ないゆえに人事評価制度がなくても人事評価が問題なく行えるという考えもあります。一方で人事評価においては、好き嫌いで従業員を判断してしまう人事は少なくありません。すると正当に評価されず、不満を感じる従業員が出てくるわけです。特に有能で向上心が高く、将来の目標設定をしっかりと行っている人材ほど、不満・不平を覚えがちです。中小企業が人事評価制度を活用するには、まずは導入を試みること、そして適切に運用することが重要になります。
人事評価制度がないことの問題点4つ
1.モチベーション低下による生産性の低下
人事評価制度がなければ多くの問題が発生してきます。特に顕著なのはモチベーション低下による生産性の低下です。モチベーションとは何かを成し遂げるための原動力となります。目的・目標が不明確であればやる気は起こりにくく、仕事に全力で取り組むことが難しくなるでしょう。モチベーション低下による生産性の低下はさまざまな問題を引き起こし、例えば残業が増えてしまう可能性があります。定時で帰宅ができない日が続けば、従業員の疲労は大きくなり、また自由な時間も減ってしまうでしょう。さらに企業は残業代の支払いをするので、従業員だけでなく企業にも大きなデメリットとなります。仕事で成果を出しても評価してもらえないとなれば、頑張ったら損と考える従業員が出てきても不思議ではありません。人事評価制度がなければ評価基準が存在しないので、何を改善するべきかの指標もないわけです。従業員が失敗したときに、その場だけ注意して済ますのではなく、失敗を繰り返さないための根本的な仕組みづくりが必要と言えます。
2.管理職の負担増加
人事評価制度がなければ、管理職の負担増加も生まれるでしょう。管理職の役割は人材を管理することです。人事評価制度があればそれに沿って対応すれば問題ありませんが、制度がなければ上司の裁量で従業員の評価を下すことになるでしょう。人材評価において感情が入ってしまうのは好ましくなく、これはひいきが生まれてしまうからです。自分が気に入った従業員には甘く、気に入らない従業員には厳しいという状況はフェアとは言えません。独断による評価はブレが生じやすく、不適切な評価につながることが多々あります。人事評価制度を導入すれば人事評価の指標ができるので、管理職の負担増加を大きく抑制できるのです。
3.人間関係の悪化
人事評価制度がない会社は、人間関係の悪化を招きやすいという問題もあります。人事評価に上司の主観が入ってしまう状況では、上司に気に入られようとする人が出てくるでしょう。上司の機嫌を取ったり、媚びを売ったりする人が出てくることもあります。一方で上司と折り合いがつかない従業員は、どんなに結果を出しても評価されないという問題が起こりがちです。人間関係にヒビが入ってくると、やがて派閥が発生してしまう可能性もあります。人間関係の悪化という問題点は次第に拡大し、最後は社内全体にまで及んでしまうこともあるのです。人間関係の悪化を防ぐためには、人事評価に透明性を持たせることがポイントになります。上司から気に入られている人も、そうでない人も結果だけで評価される仕組みづくりが必須です。人間関係が悪化すると従業員の士気は下がり、会社の業績ダウンにもつながるので改善が必要でしょう。赤字が継続すれば職場の雰囲気、人間関係をさらに悪化させることになりかねません。
4.人材の流出
人材の流出が多いという企業は、人事評価制度がないケースが多いです。不適切な人事評価がなされていると、会社を信用できないという従業員が現れてきます。頑張りに対してまったく評価されず、給料にも反映されないとなればやる気は落ちていくでしょう。結果的に人一倍頑張っている従業員ほど不満を抱えて、会社を去っていく状況になりがちです。事業運営には人材が必須であり、人材流出は大きなロスとなります。新しい人材を雇用するにしても、またゼロから教育していく必要があるわけです。求人募集や採用などの業務にリソースを消費するデメリットを考えれば、人材流出は最小限に抑える必要があります。能力のある人材ほど明確に目標を設定して動いていることが多いです。それにより地道かつ着実なスキルアップが可能になりますが、肝心の企業がその頑張りを評価できなければ本末転倒です。優秀な人材を守るという意味でも、人事評価制度は欠かせません。
人事評価制度の必要性
企業の方向性を従業員に周知するためにも人事評価制度は非常に重宝します。企業が何を目指しているのか従業員に明確に伝われば、相手は何をすべきか認識できるのです。企業にはそれぞれカラーやイメージが存在し、それにそぐわない人材は淘汰される傾向があります。企業理念をしっかりと伝えて、どのような価値観を持って業務に臨むべきなのか認識できれば、従業員は自分がやるべきことを理解してくれます。人事評価制度はよい点・悪い点を洗い出すことができるため、問題点を改善させる道しるべになるのです。何を伸ばして、何を改善させればよいかわかるだけで、方向性を見失うことはなくなります。
昇給や昇格の適切な判断を行うために人事評価制度を導入する企業も増えています。将来的に昇給や昇格の可能性があれば、それが従業員のモチベーションになるのです。一方で企業が処遇設定に明確な基準を持っていなければ、従業員を正当に評価することが難しくなります。すると頑張っているのに評価されない、あまり頑張っていないのに出世する、といった不公平な問題が発生する可能性があるわけです。企業がしっかりと従業員を評価していくことで、企業全体の活力を底上げすることにもなります。
適切な人材配置を行うためにも人事評価制度は必要です。人材配置を誤ってしまうと、従業員の能力を引き出すことが困難になります。人には誰しも得意・不得意があり、例えば営業が苦手な従業員に営業をまかせても非効率的です。能力を発揮できる業務を見極めることは、企業が率先してやるべき課題です。適切な人材配置を行うことができている部署は伸びる傾向があります。人材配置のミスマッチを防ぐためにも、人事評価制度で従業員一人ひとりの適性を把握しておく必要性があるでしょう。従業員の能力に合わせた仕事の割り当てをするイメージが大切です。
適切な評価を実施するためには、適切な評価基準を設けておく必要があります。基準が定まっていないと、人材を評価するうえでブレが発生してしまうのです。上司の気分ひとつで従業員の評価が左右されるようでは困ります。常にフェアな評価を下すためにも、人事評価制度を導入する必要があるでしょう。フェアな評価を受けた従業員は、会社に信頼を寄せることにつながります。会社のことが好きであればあるほど、会社のために頑張りたいと考えるのは自然の摂理です。人事評価制度は企業、従業員の双方にとって大きなメリットがあるのです。
人事評価制度を導入するメリット5つ
1.社内コミュニケーションの促進
社内コミュニケーションの促進をすることで、企業全体の活力アップにつなげられます。やる気がそのまま評価されるとやる気が向上し、それが心身にもよい影響を与えるのです。人事評価制度を導入すれば従業員は自身の評価アップを意識するようになり、それが積極的なキャリアアップにつながるわけです。社内コミュニケーションはあいさつや必要事項の伝達など、最小限でよしとする企業もありますが、人間関係を良好に維持するという意味では問題があります。人事評価制度導入により社内コミュニケーションの促進を図れば、従業員一人ひとりのキャリアアップが実現し、結果的に企業の業績アップ、安定した黒字化などにつなげられる可能性が高いです。
2.人材育成と従業員の成長
人材育成と従業員の成長のためにも役立ちます。従業員は頑張りが正当に評価されるため、自身の能力をより伸ばそうとモチベーションが上がるのです。企画やプレゼン、事務処理などのスキルがアップすると、それが結果に直結します。さらに数字という指標によって、自身の立ち位置が明確にわかるようになるのです。人材育成のポイントは、従業員にやる気を出してもらうことです。頑張っても頑張らなくても給料に違いがなければ、頑張るのは損だと考える人が出てきます。こうした不公平感が蔓延してしまうと、社内全体の士気が低下することになりかねません。人事評価制度は人材育成を促進させるもので、従業員の苦手を克服させることにもつながります。例えば交渉が苦手な従業員の交渉力が上がれば、個々人はもちろん社内全体の利益にも直結するでしょう。
3.企業理念の周知促進
企業理念の周知を促進できるのも大きなメリットです。企業は求人募集をする際に、自社にマッチングした人材を厳選します。しかし本当にマッチングしているかどうかは、実際に働いてもらわないと見えにくい部分です。ミスマッチする部分については、企業努力によってある程度改善できます。例えば企業理念の周知をすることで、企業が従業員に何を求めているのか、どのような人材が会社にとって好ましいのか、などを認識してもらえます。人事評価制度により企業理念の周知をすれば、従業員は何をすれば企業に貢献できるのか明確にわかるため、目標設定をする上でも有利です。
4.離職率の低下
離職率の低下も期待でき、これは人事評価制度が従業員のやりがいを促進し、楽しく働けるように導くことができるからです。もっと結果を出したい、会社に貢献したい、と考えることができれば容易には会社を辞めません。会社を辞める理由として圧倒的に多いのは、やりがいを感じられない、頑張りが評価されない、などです。職場環境と離職率は比例するため、離職率を低くするためには職場環境を改善していくのが近道です。企業が従業員の離職を抑えられれば、新たに人材を採用をする機会が減るでしょう。人材採用も企業が抱えるコストのひとつですから、これを削減できるだけでも企業の利益アップ、安定した黒字につながります。
5.生産性の向上
生産性の向上も人事評価制度の導入により得られるメリットです。生産性を向上させるためには、従業員のモチベーションがカギになってきます。人は誰しも楽しいことには没頭できますが、嫌なことには消極的になってしまいます。仕事を好きになってもらえれば、従業員は自分から率先して業務を遂行していくでしょう。いろいろと考えて効率的に結果を出すための工夫もします。勤務時間に相違がなくても、効率が上がれば生産性の向上を期待できます。人事評価制度を導入すれば目標設定が容易になるので、今何をするべきかが見えてくるのです。それによりムダな作業が減少し、仕事全体の品質がアップします。生産性の向上は数値という結果として残るため、さらに従業員をやる気にさせてくれるでしょう。

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