人事評価制度の目的
人事評価制度が注目を集めていますが、それには人材育成の促進や企業の方向性を周知すること、人材の適材適所を実現や昇給・昇格などの処遇を決定するなどの目的があります。
人材育成の促進は、人事評価制度によって基準が明確になったり、どのような人材が必要でどう育てれば良いかを知ることにつながります。人材の方も成長が実感できるようになりますから、人事評価制度を導入したり運用するのは基本的に良いことだといえます。
企業の方向性を周知することは人材育成の促進にも通じますが、人材に対して企業がどういった人材を求めているのか、どういう人材育成をするかメッセージを発信することになります。企業の方向性を周知することができれば、相性の良い人材が求人に集まったり、即戦力が増えることにもなり得ます。
人材の適材適所を実現、これは人事評価が明確になることで、人材の得意不得意や適材適所も明確になることが大きいです。いまいち成果を上げられていない人材も、実は適材適所が合わないだけで、ポテンシャルを発揮できる場所が見つけられる可能性があります。
人事評価制度はまさにそれを明確にしたり、人材配置を検討する材料を得る方法となります。
昇給・昇格などの処遇を決定するのも簡単ではありませんが、人事評価制度があればそのハードルは低くなるでしょう。基準を明確にして昇給や昇格を判断するので、誰もが納得できる結果にすることができます。
人事評価制度に対する不満の原因4つ
人事評価制度は必ずしもメリットばかりではなく、不満が生じるというデメリットもあります。
1.評価基準が不明確
不満が生じやすいのは評価基準が不明確な場合で、何を基準にどう評価されているのか分からないケースです。
明確な基準があれば納得できる評価も、不明確でどのように評価が行われているかブラックボックスであれば、結果だけを見て不満を覚えるのは無理もないです。
つまり、人事評価をするには必ず明確な評価基準を設けることが重要だと分かります。オープンに基準を公開しているつもりでも、肝心なところが曖昧だったり隠されていては意味がないです。基準が明確なら評価に納得できなくても基準には納得できますし、少なくとも大きな不満にはつながらないでしょう。
同じような成果を出しているはずなのに、一方は高評価でもう一方は低評価、このように評価が分かれる不明確な判断基準が不満のもとになります。
2.評価基準の偏り
評価基準に偏りがある、基準が明確でもそこに偏りがあればやはり不満が生じてしまいます。基準はそれを設ける側の価値観によって決められるので、全く偏りのない基準を作るのは現実的に考えて不可能です。とはいえそれを最初から諦めるのは間違いですし、常に偏りを是正するつもりで基準の見直しを図るべきだと考えられます。
偏りというのは見る視点によって分からなかったり、逆に明瞭で明らかに偏っていると分かることがあります。
1点のみからの基準の評価は偏りを見落とすことになり得ますから、様々な視点から偏りがないか確認する意味で、評価基準に問題はないか意見を募るのが望ましいです。
不満の声が寄せられたらその都度評価基準を見直すことも、人事評価制度の不満を減らす為の重要なポイントとなるでしょう。偏りが見られるケースを挙げるとしたら、成果ばかりが評価されるケースで、プロセスが軽視されたり無視される人事評価が行われる場合です。
3.評価基準が現実的ではない
評価基準が現実的ではないというのも、実は人事評価制度にありがちな不満の原因の1つです。時代遅れに感じられたり、誰もクリアできなさそうな基準を評価に用いるのは明らかにNGですし、そのような評価基準は形だけで何の意味もないです。
古い会社で評価基準の価値観も古い場合は、人事評価制度の基準が形骸化している部分が少なくないことが多いです。それこそ、会社の収益につながらないようなどうでも良いことが基準に設けられていたり、評価に用いられていることもあります。
そんな評価基準は従業員の不満を招くだけですし、会社にとっても好ましくないので早急に見直すべきです。
成果を出して会社に貢献したものの評価に反映されないと分かれば、その従業員は転職を考えることになるでしょう。こういった現実との乖離は不満を引き起こしますし、それもかなり大きな不満になるので注意が必要です。
4.評価が昇給・昇格につながらない
評価が昇給・昇格につながらない、成果が評価につながらないのも問題ですが、評価されても昇給や昇格につながらないのも考えものです。これでは従業員のモチベーションは上がりませんし、それどころか下がってしまう恐れがあります。評価が昇給・昇格につながらないことが知れ渡れば、他の従業員もモチベーションが下がって成果につながらないことになります。
人事評価制度は、正しく評価されてその結果が昇給や昇格につながってこそですから、モチベーションが上がる形に評価される人事評価制度を運用するのが理想的です。やり方を間違えると効果が発揮されるどころか逆効果になりますし、何の為の人事評価制度か分からなくなる可能性があるので注意です。
昇給や昇格が発生しても、その幅が小さいというのはまた別の課題ですが、評価が昇給や昇格にすらつながらないのは論外なので気をつけたいものです。
評価者への不満の原因4つ
1.ハロー効果
評価には必ず評価をする者がいるわけですが、評価される側は評価者に対する不満を抱きがちです。例えばハロー効果と呼ばれる問題も、人事評価制度における評価者への不満を覚える原因に数えられます。
ハロー効果とは評価対象の特徴だったり第一印象によって、因果関係がない項目の評価に影響してしまうことをいいます。これは評価者の主観によるもので、成果やプロセスで評価されるべきところが、人柄や最初に感じた印象で評価されることになるのが問題です。
このような評価に陥りがちなのは、相手のことを良く知らない上司と部下の関係だったり、長年の付き合いであまり良好な関係を築けていないケースです。部下に対してあまり良い印象がない上司が評価者になると、必然的に評価が厳しくなり、評価とは関係のない印象がハロー効果として結果に影響するので注意が不可欠です。
2.フィードバックがない
フィードバックがない、これも人事評価制度で評価者への不満につながりやすい原因です。評価に関するフィードバックができて、それが今後の人事評価の改善につながるのであれば、評価者に対する不満は起こりにくいはずです。
しかしフィードバックの仕組みそのものがなかったり、あっても上手く機能していなければ不満が燻ることになるでしょう。フォードバックは人事評価制度自体が正しく機能しているか判断する意味でも、必要不可欠ですし重要な仕組みとなります。フィードバックが機能して人事評価制度に反映されている企業は、従業員の不満が起こりにくく、評価者への不満も感じにくい傾向です。だからこそ人材を評価して終わりではなく、フィードバックも含めて機能するように人事評価制度を運用するべきです。
使い古された言葉ですが、PDCAサイクルを回してこその人事評価制度ですし、制度の評価や改善をしなければ不満は解消しないです。
3.評価対象の情報不足・誤認
評価対象の情報不足・誤認は部下の立場からするとあり得ないことですが、上司が部下のことを十分に把握せず、仕事の内容についてもあまりよく理解していないケースもあります。
そもそも、評価対象がどういう人物か情報を頭に入れておくのは基本中の基本ですし、どんな仕事をしているのかも知らずに対象を評価することなどできないです。その認識すらも希薄な上司が人事評価をするとなれば、結果がどうであれ部下に不満を抱くなというのは難しいでしょう。
評価をするなら自分のことを知って欲しいと思うのが部下ですし、仕事についても理解してから成果やプロセスを評価してもらいたいものです。評価対象の情報不足は誤認につながりますし、いくら優れた評価基準が存在していても、正しい評価とその結果は望めないです。
評価者が対象の情報を知って理解を深めてから人事評価に臨めるかどうかは、ある意味で企業の責任でもあります。
評価者によって厳しさに差がある
評価者によって厳しさに差がある、人が評価をする以上は全く感情を挟まないのは難しいですが、差が激しいと部下は大きな不満を抱きます。
厳しく評価された人は、自分に非があるのかと疑心暗鬼に陥ったり、正しく評価されないことに苛立ちを覚えるようになります。特に、評価基準が不明確で同じ評価者なのに他の人は高く評価されていると、疑心暗鬼や苛立ちが強くなるわけです。やがてそれらは評価者に対する不満に変わり、正しく評価されているのかという人事評価制度に対する不満にも発展します。
甘い評価も考えものですが、厳しすぎるのも良くありませんし、評価対象によってバラツキが大きいとなれば無視できない問題です。差は完全に拭えないにしても縮める努力はするべきですし、決してその状態を放置してはいけないです。評価に大きな差がある人が評価者になっていることも不満の種ですから、その芽は大きく成長する前に早く摘むのが正解となります。
人事評価への不満を放置するリスク2つ
人事評価への不満に気がつかないのは駄目ですが、不満を放置することもリスクにつながるのでNGです。
人事評価への不満を放置することで考えられるのは、従業員のモチベーション・生産性が低下と離職率の増加という2つのリスクです。
1.従業員のモチベーション・生産性が低下
従業員のモチベーション・生産性が低下は、頑張っても評価されないという理由でやる気がなくなり、成果が上がらなくなる結果に至ります。この従業員のモチベーション・生産性が低下しやすいのは、プロセスを軽視する人事評価や減点方式の評価方式を採用しているケースです。
モチベーションが保てなくなれば従業員はポテンシャルを発揮しませんし、他の従業員にも影響して社内全体がやる気のなさに包まれる恐れが出てきます。気がつけば一部のやる気がある従業員だけでなんか会社を保っている、そういう状況にもなり得るでしょう。
従業員のモチベーション・生産性が一度低下し始めると、雪だるま式に問題が膨れ上がるので、早急に食い止める必要が出てきます。大きくなった問題を解かしたり小さくするのは大変なコストと労力を要しますから、そうなる前に人事評価制度を見直すことをおすすめします。
離職率の増加
離職率の増加は、成果が評価されず昇給にも昇格にもつながらないと分かり始めることが切っ掛けになります。
不満が残る人事評価制度による評価は、評価者にあたる上司、ひいては会社そのものに対する不満に成長します。企業にとっては人材の流出を招くことになりますし、損失が発生して将来の人材採用、育成コストの増大が避けられなくなるでしょう。
少子高齢化が進んでいる現在はどこも人材不足のリスクが懸念されていますから、一度貴重な人材を手放してしまうと、再び同等の人材を確保するのが大変です。そんな時代に時代錯誤の人事評価で従業員に我慢ならない不満を覚えさせてしまえば、転職を考え始めて離職してしまっても不思議ではないです。
もし離職が次々に発生してもその理由に上司も会社も気がつかないのなら手遅れですが、理由が分かっているなら改善できるはずです。分かっていてもそれをしない、先送りにしたり他人任せにするような職場は、結局のところ従業員にとっては長く働き続けたくない環境です。
モチベーションも生産性も人事評価だけで決まるものではありませんが、しかし何度も納得できない評価を受け続ければ、疑心暗鬼から転職、離職ということになり得ます。人事評価への不満は放置するべきではないですし、フィードバックの仕組みを設けて離職を防ぐのがリスクの回避方法となります。
人事評価制度を見直す際のポイント5つ
人事評価制度を見直そうと思ったら、5つのポイントを念頭に検討するのが良いです。
1.ハロー効果の排除
ハロー効果の排除は評価対象者の特徴だったり、第一印象が評価に影響しないようにするものです。上司と部下の関係性はハロー効果の影響に関わりやすいので、なるべく直接的な上下関係を避けつつ、ある程度相手のことを知っている評価者が評価するのが理想です。
とはいえ、いうのと実際にやるのは違いますし、決して簡単なことではないので安易にはできませんし、簡単に結果が出るとも限らないです。本当に避けるべきは許容できない不満を評価対象の部下に抱かせないことで、訴訟に発展するような怒りを引き起こさない人事評価に取り組むことです。
人事評価が訴訟に発展とは考えにくいかもしれませんが、あまりにも理不尽な評価を下してしまえば、部下が上司を訴えてもおかしくないです。
2.評価者のスキル向上
評価者のスキル向上は、評価者側が公平に対象を評価できるように技術を磨き、信頼されるのがポイントとなります。人事評価は基準がもとになるわけですが、この基準を軽視したり逸脱している評価者は信頼されないです。つまり評価者は人事評価の基準をしっかりと把握すること、基準に沿って評価できるようにスキルを磨くことが求められます。
勿論、公平な人事評価基準が設けられていることが大前提ですが、評価のスキルを磨くことは部下から訴訟されるリスクを回避することにもつながります。評価者のスキル向上にもコストは掛かりますが、人事評価制度を見直す為にコストを掛ける価値は十分にあります。
3.評価基準を明確にする
評価基準を明確にすることは、人事評価制度の見直しにおける重要な鍵を握るポイントです。そもそも評価者はこの基準に沿って従業員を評価するわけですから、評価基準が不明確だったり不満を招く内容だとすれば根底から揺らぐことになります。
当然ながら明確な評価基準を作るのは簡単ではありませんし、既存の基準を見直して作り変えるとなればそれはそれで大変なことです。評価基準を考えて設定するには、組織がどういった理念や価値観で事業に取り組んでいるのか、その為の人材を求めているのかを明確にするのが先決です。根本が明確になれば評価基準を明確にするのも難しくなくなりますし、誰にとっても説得力が感じられる基準に基づく評価が実現します。
人事評価制度は会社から従業員に対するメッセージであって、正しい評価ができれば従業員は自分のことをみてくれている、正当な評価をしてくれているという実感が得られます。
3.現状と合っているか確認する
現状と合っているか確認することが見直すポイントですが、昔に作られた評価基準は時代に合っていないことが多く、現状が反映されないまま誤った評価が行われるケースが珍しくないです。
人事評価制度の基準はその都度見直すべきですし、特に現代はビジネスが短期間に大きく変化することもあるので、PDCAサイクルを回しながら現状と合っているか見直すのが得策です。見直しをしないと現状からかけ離れる基準が出てきてしまいますし、それが従業員の不満を招くので見直しは軽視できないです。
等級制度・賃金制度と連携させる
等級制度・賃金制度と連携させる、人事評価制度はただ人材の成果を評価するだけでなく、人材配置や昇給、昇格に結びついてこそ意味があります。等級制度や賃金制度との連携も同様で、単純な年功序列ではなく職能資格に合わせて等級や賃金を決めたり、ジョブ型雇用による等級制度と連携させるのもポイントになります。
等級は役割に応じて分ける方法もありますし、等級に合わせて賃金制度も運用すれば、不満が生じにくく誰もが納得できます。能力や得意分野で評価するのも手ですし、こういった方法も等級制度・賃金制度と連携させることができれば、人事評価制度はより良いものとなるでしょう。

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