介護事業所の経営を安定させ、発展させていくためには、人材の育成・定着は必要不可欠です。そうしたお悩みの解消策は、ずばり人事制度(人事評価制度)の導入です!
人事制度を導入することで、職員の育成・定着を実現することができます!
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1. はじめに
本コラムの目的と背景
これまでの連載コラム(第1〜4回)では、介護事業全体における人事評価制度の重要性や、その導入方法・活用事例を取り上げてきました。訪問介護や通所介護など、多様なサービス形態においてスタッフを適切に評価することは、人材の定着とスキルアップ、サービス品質の向上に直結する大きなテーマです。
今回の第5回コラムでは、その中でも**「ケアマネ(介護支援専門員)」**に焦点を当て、人事評価制度をどのように組み立てていくのが良いかを深掘りしていきます。ケアマネは利用者のケアプラン作成やサービス調整、モニタリングなど、介護保険サービスの要ともいえる業務を担う存在です。しかし、他職種とは異なる専門性や責任範囲があるため、評価指標をどう設定するか難しい面があります。
ケアマネを取り巻く課題と重要性
ケアマネは利用者一人ひとりのニーズを汲み取り、最適なサービスをコーディネートする役割を担っています。しかしながら、以下のような課題が指摘されています。
- ケアプラン作成や調整業務の多忙化
サービス利用者数の増加、地域包括ケアシステムの推進などに伴い、ケアマネの業務は複雑化・多様化しています。各事業所との連絡調整、利用者や家族への対応など、時間的・精神的負担が大きい状況です。 - モニタリングや書類作成の負担
利用者の状況変化に合わせてプランを再調整しなければならず、モニタリングや書類作成に多くの時間を割かれます。そのため、現場での実務と記録作業のバランスが取りにくいケースが多いです。 - 専門性や成果が見えにくい
ケアマネは直接的な身体介護ではなく、利用者の生活全般をマネジメントする仕事です。成果が数字や目に見える形で表れにくく、「何を評価すればいいか分からない」と頭を悩ませる経営者・人事担当者も少なくありません。
こうした課題を踏まえると、ケアマネを適切に評価する制度が整っていないと、ケアマネ自身のモチベーションが下がったり、優秀な人材が流出してしまったりするリスクがあります。また、評価制度をうまく活用できれば、ケアマネの専門性を高め、サービス全体の質を向上させる大きな武器となるでしょう。
介護事業における「ケアマネ」への人事評価制度の導入状況
ケアマネの評価が後回しにされやすい理由
- 成果が定量化しにくい
ケアマネの仕事は、利用者の状況や課題、地域資源などを総合的に判断してケアプランを作成し、他サービス事業所と連携しながら支援を行います。しかし、その成果が「利用者の満足度」や「生活の質の向上」など、定量化しにくい面が強く、評価指標を作りにくいのが実情です。 - 他職種との評価基準の違い
介護福祉士や看護師など、他の職種は業務内容が比較的具体的で評価しやすい面があります。一方、ケアマネはデスクワークと現場対応を行き来するため、単純な訪問件数や看取り件数などとは違った切り口が必要です。 - 評価者の専門知識不足
ケアマネ業務には法的・制度的知識が求められ、評価者がこれを十分に理解していないと、公正な評価が難しくなります。結果として、評価自体が先送りにされがちという背景があります。
経営者・人事担当者が感じる評価の難しさ
- 「ケアプランの内容や利用者満足度をどう数値化するか見当がつかない」
- 「モニタリングや連絡調整の努力をどこまで加点すべきか迷う」
- 「ケアマネ同士で業務量や利用者数にばらつきがあり、公平さを保てるか心配」
こうした声が多いのは、ケアマネが**「制度の要」**でありながら、現場によって仕事の進め方や難易度が大きく異なる点に起因するといえます。次章では、これらの課題を整理し、対策を考えていきましょう。
2. ケアマネの評価が難しい理由とその対策
ケアマネの人事評価が難しい3つの事情
- 担当利用者の重症度や家族事情による難易度差
あるケアマネは軽度の利用者を数多く担当し、また別のケアマネは重度者を少数担当しているなど、ケースの難易度が異なる場合があります。一律の基準で訪問件数やプラン数だけを評価すると、不公平感が生まれやすいです。 - サービス連携や地域資源の活用度合いが可視化しにくい
ケアマネの大切な仕事として、他事業所や地域との連携があります。しかし、その連携がどの程度うまくいっているかを数値化するのは容易ではありません。報連相の頻度や記録だけでは質を把握しきれない問題があります。 - 利用者・家族からのクレーム発生と背景要因の複雑性
クレームが起きても、ケアマネ個人の非よりも制度上の制約や利用者家族の希望とのギャップが原因であるケースも多いです。一概に「クレーム件数が少ない=優秀」とは言えず、背景や対応プロセスを含めて評価する必要があります。
課題を解決するための3つの基本アプローチ
- ケースミックスや負担レベルを考慮した評価指標の設定
利用者の要介護度合い、家族構成、医療ニーズなどを考慮し、**「ケースの難易度」×「担当件数」**を組み合わせて負担レベルを見える化する仕組みが有効です。単純な担当件数のみの比較を避け、難易度に応じて評価や加点を行う方式が公平感を高めます。 - 業務プロセスの記録とフィードバック面談の徹底
ケアプラン作成やモニタリングのプロセスを記録ツールやシステムに蓄積し、評価者が定期的にフィードバック面談を行う体制を整えます。数字に表れにくいサービス連携や問題解決能力を、面談で補足的に評価する仕組みが不可欠です。 - 多角的評価や他職種の意見収集
ケアマネの評価にあたり、**他職種(介護職、看護師、リハビリ職など)**からのフィードバックを取り入れると、連携の質を評価しやすくなります。また、利用者・家族へのアンケートを活用することで、ケアマネのコミュニケーション力や調整力をより客観的に捉えられます。
3. ケアマネ向けの人事評価制度設計ポイント
定量評価の主要ポイント3選
- 担当件数とケースの難易度指数
ケアマネが何人の利用者を担当しているかだけでなく、要介護度や医療依存度、家族のサポート状況などの難易度指数を設け、**「担当者数 × 難易度係数」**のように算出する方法があります。これにより、単純な件数だけの評価を回避し、ケースミックスを考慮した形で評価が可能になります。 - プラン更新率・モニタリング実施率
ケアプランの更新時期を守っているか、モニタリング(利用者宅や施設への訪問)の頻度が適切かといった項目を定量的に追いかけます。ただし、更新や訪問が多ければ良いわけではなく、利用者の状態に合わせた回数なのかを見極める必要があります。 - 記録・報告の整備度合い
ケアマネは多くの書類や記録を作成する必要がありますが、それらが正確・迅速に整備されているかを評価指標とするのも一案です。書類提出の遅延回数、ミスの件数などを数えることで、業務管理能力を評価できます。
定性評価の主要ポイント3選
- コミュニケーション力・アセスメント能力
ケアマネの最大の武器は、利用者や家族、他職種との連携力です。ヒアリング力、悩みの抽出力、適切なサービス調整力などを評価するため、面談やケースカンファレンスで事例を共有し、評価者がフィードバックすると良いでしょう。 - トラブル・クレーム対応と問題解決力
ケアマネ業務では、クレームやトラブルが起きた際の対応が重要な評価要素となります。原因分析や再発防止策の提案、関係者との連携など、そのプロセスを観察し、評価シートに落とし込む方法がおすすめです。 - 地域資源の活用と新サービス開拓
ケアマネは、地域にある多様なサービスを組み合わせて利用者を支援します。地域包括支援センターや医療機関、福祉用具レンタル事業所など、幅広いネットワークを活かして新たなサービス選択肢を発掘する力も評価の対象にできます。**「どの程度、地域資源を深く知り活用しているか」**を見極めると、ケアマネの実力がより明確になります。
評価結果の活用方法
昇給や賞与だけではなく、キャリアパス構築に活かす
評価結果は給与テーブルへの反映だけでなく、ケアマネ自身のキャリアアップをサポートするデータとしても活用可能です。たとえば、「難易度の高いケースを担当して経験を積む」「管理者や主任ケアマネを目指す」「専門分野(例えば認知症高齢者や末期がん患者)に特化する」など、スタッフの志向や強みに合わせて次のステップを提示すると効果的です。
スキルマップや資格取得支援制度との連動
ケアマネ業務に関連する知識としては、認知症ケアやリハビリ、ターミナルケア、福祉用具など多岐にわたります。スキルマップを作成し、評価結果をもとに「どの領域の学習が必要か」「どの研修に参加すべきか」を明確にすれば、スタッフが計画的にスキルを伸ばせるようになります。資格取得支援制度を併用すれば、学習意欲や専門性がさらに高まるでしょう。
4. ケアマネ向け 人事評価制度の活用事例
ここでは、実際にケアマネの人事評価制度を導入・運用することで成果を上げた2つの事例をご紹介します。
事例1
導入背景
A事業所は、要介護度が比較的高い利用者を多く抱える居宅介護支援事業所でした。ケアマネ同士で担当者数や負担レベルに大きな差が生じ、不公平感が高まって離職率が上昇傾向に。経営者は「ケアマネ業務を適切に評価し、モチベーションを維持してもらう必要がある」と判断し、人事評価制度の導入を決断しました。
導入内容
- ケース難易度指数の設定
要介護3以上、家族不在、医療ニーズありなど、ケースの難易度要素をリストアップし、ポイントとして加算する仕組みを導入。単なる担当件数ではなく、「難易度 × 担当件数」でケアマネの負担を可視化し、その結果を評価に反映させました。 - 業務記録のICT化と面談強化
ケアプラン作成やモニタリングの記録をクラウド上で一元管理し、管理者が随時チェックできる体制を構築。記録だけでなく、ケアマネ一人ひとりと月1回の面談を実施し、利用者トラブルの対応内容や地域連携の事例などを共有する時間を設けました。 - 評価結果の昇給・役職登用への反映
評価結果が一定基準を上回ったケアマネには、主任ケアマネへの昇格試験の受験補助を提供したり、研修費用の一部を補助する仕組みを作成。スタッフは自身の努力がキャリアアップにつながることを実感し、離職率が大幅に改善。利用者満足度アンケートでも高評価を得るようになりました。
事例2
導入背景
B法人は複数の居宅介護支援事業所を運営しており、ケアマネの数も多かったものの、拠点間で評価基準や運用方針に差が生まれていました。特に、クレーム対応や地域資源の活用度合いに関しては、評価が各管理者の主観に左右される傾向が強く、不公平感が蔓延していたのです。
導入内容
- 統一の評価シートと多職種連携会議
全事業所で使用する評価シートを作成し、定量項目(担当件数、難易度指数、更新率など)と定性項目(コミュニケーション力、チーム連携度合いなど)をポイント化。さらに、各拠点の管理者や看護師、ケアマネリーダーが月1回オンライン会議で評価のすり合わせを行い、主観差を最小化するよう努めました。 - 利用者・家族の声の定期収集
半年に一度、すべての利用者・家族を対象にケアマネへの満足度アンケートを実施し、「相談しやすい」「プラン変更に柔軟に対応してくれる」などの定性意見を収集。評価シートでは最大〇点をアンケート結果から加点する仕組みを導入しました。 - 評価結果を共有する場の設置
評価期間終了後、ケアマネ同士が互いの評価項目を確認し合う場を設け、優良事例の共有や課題解決のヒントを交換。**「自分はこういう連携をして高評価を得た」「このケースではこんな工夫をした」**という情報交換が活発化し、全体的なスキルアップとサービス水準向上につながったとのことです。
5. まとめ
本コラムのポイント
- ケアマネ特有の評価項目の設定
- ケアマネ業務はデスクワークと現場対応が混在し、成果が数字に表れにくい特徴があります。担当者数だけでなく、「ケース難易度」や「地域連携度合い」「クレーム対応のプロセス」などを考慮した定量・定性の評価軸を用意しましょう。
- コミュニケーション力や問題解決力、地域資源の活用など、ケアマネ特有の専門性を正しく評価できるようにすることが大切です。
- 制度導入・運用における今後のステップ
- 評価制度の継続的な見直し(経営方針・事業規模の変化に合わせる)
- ケアマネを取り巻く環境は、介護報酬改定や地域包括ケアの進展などで絶えず変化します。定期的に評価項目を見直し、現場の声を反映して制度をブラッシュアップすることが重要です。
- キャリアパス制度との連動性を強化して次世代人材の育成
- 人事評価が「査定」のためだけではなく、ケアマネの成長や専門性の深化をサポートする仕組みにすることで、スタッフのモチベーションが飛躍的に向上します。主任ケアマネや管理職への昇格要件を明確にし、実務経験や評価結果を連動させると効果的です。
- ケアマネ職特有の事情を考慮した人事評価で業績向上を狙う
- ケアマネの質が向上すると、利用者や家族の満足度が高まり、サービス全体の品質向上につながります。結果的には、事業所の評判アップ、利用者増加、スタッフ定着といった好循環を生み出し、経営基盤の強化にも大きく貢献します。
ケアマネは、介護現場で欠かせない専門性を有しながら、業務が「見えにくい」「評価しにくい」とされがちな職種です。だからこそ、人事評価制度を適切に導入・運用して、ケアマネ一人ひとりの頑張りを正しく認め、成長をサポートする仕組みを整えることは、介護事業の経営にとって極めて重要といえます。本コラムの内容を参考に、自社の現場状況や経営方針を踏まえたうえで、ケアマネ向け評価制度の設計・運用をぜひ検討してみてください。スタッフのモチベーションが高まれば、結果的には利用者満足度と業績の向上につながるはずです。
介護事業所の経営を安定させ、発展させていくためには、人材の育成・定着は必要不可欠です。そうしたお悩みの解消策は、ずばり人事制度(人事評価制度)の導入です!
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