人事評価の新たな手法!コンピテンシー評価・MBO(目標管理制度)・360度評価・1on1について解説!

働き方改革や同一労働同一賃金の義務化、少子高齢化による労働人材の不足、グローバル化、個人の価値観の変化、働き方の多様化など、従来の人事制度では対応が難しくなっている昨今において、人事制度にもさまざまな新たな手法が登場しています。
そこで今回は人事制度の新たな手法を4つピックアップして解説します。

*人事制度の基本について知りたい方はこちらの記事をご覧いただくと一通りのことを学んでいただけます。

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目次

コンピテンシー評価とは

コンピテンシー(competency)は「能力」という意味ですが、ビジネス用語としては「素晴らしい業績を残している従業員の行動特性」という意味で使われており、コンピテンシー評価とはその従業員の行動特性を明確にし、評価項目を分類して評価基準を作成して従業員の評価に用いる評価手法のことです。
この行動特性には、行動そのものだけでなく性格や思考パターンなどの特徴も含まれます。

コンピテンシー評価の歴史

コンピテンシー評価の語源となっているコンピテンシー(competency)という言葉は、もともとは心理学用語として生まれた言葉ですが、ハーバード大学のマクレランド教授が1970年代に行った調査をきっかけに人事用語として使われるようになりました。マクレランド教授によって提唱されたコンピテンシーという能力概念を、弟子にあたるリチャード・ボヤツィスらが実用可能な形にまとめて、1990年代のアメリカ企業に採用されるようになりました。
日本でコンピテンシーが導入されるようになったのは1990年代の終わり頃のことで、現在はこれまでの評価手法に変わる新たな評価手法として採用するする企業が増えています。

コンピテンシー評価と職務遂行能力評価の比較

コンピテンシー評価とよく比較されるのが日本の企業の多くがこれまで採用してきた職務遂行能力評価(職能資格制度)です。

コンピテンシー評価職能資格制度
評価する能力行動に結びつく性格や思考パターン等を含めた結果としての「総合的な能力」能力・スキル・知識・性格など「単独の能力」
評価の基準具体的・実証的・実例的希望的・抽象的・曖昧

コンピテンシー評価は優れた業績を残した従業員の行動から基準を作成しているため、評価の基準や求められる能力が極めて具体的かつ総合的なものになります。

コンピテンシー評価と職務遂行能力評価のメリットとデメリット

コンピテンシー評価職能資格制度
メリット・評価に納得しやすい
・適材適所の実現(人材マネジメントの容易化)
・能力開発(=人材育成)しやすい
・評価の容易化
・長期的視点での人材育成に適する
・人事異動、組織改編しやすい
・ゼネラリスト育成向き
デメリット・制度導入の負担
・コンピテンシー把握のためのヒアリングが必須
・改訂、メンテナンスの負担
・人件費が高くなる
・年功序列の評価になりがち

評価制度の大きな課題として「従業員の納得を得ること」が挙げられますが、コンピテンシー評価のメリットとして、重要度の高い従業員の「納得」を得られる点や、戦略的人材マネジメントの行いやすさなどが挙げられますが、一方で、制度の導入にはコンピテンシーを把握するために正確なヒアリングを従業員に実施しなければならないので、従業員に負担が生じてしまうというデメリットもあります。

コンピテンシーモデルのタイプ

コンピテンシー評価の基準となるモデル(ハイパフォーマー)を設計する方法として3つのタイプがあります。

①理想型モデル

企業にとって理想的な人物像をイメージしてモデルを設計します。

②実在型モデル

企業に実在するハイパフォーマーを参考にして設計します。但しそのハイパフォーマーの行動特性に再現性があるかどうか、参考にするか否か、検討する必要があります。

③ハイブリッド型モデル

企業に実在するハイパフォーマーをベースにして、企業にとっての理想的な人物像を補完して設計します。

コンピテンシー評価のメリット

効率的な人材育成ができる

コンピテンシー評価は、高い実績を残している従業員の行動特性から部門・業務・職種ごとに評価基準を設定しているため、実際の業務に即した評価を行うことができ、各業務に関して専門知識やスキルを持った従業員が評価されやすくなります。
評価される従業員はキャリアアップのための目標を具体的に明確に意識して業務に取り組むことができるので、モチベーションアップやスキルアップにつながりやすいです。

評価者が従業員の評価をしやすい

コンピテンシー評価は、評価基準が明確に設定されていて「行動しているか」「行動していないか」で評価をすることになるので、評価が評価者の主観に左右されにくく、また評価者がさまざまな周りからの影響を受けづらく、公平で透明性の高い評価を行うことができます。

評価される従業員の評価に対する納得感が高まる

コンピテンシー評価は、評価される従業員が「行動しているか」「行動していないか」で評価されるので、従業員自身が自分自身の行動と評価結果とを比べることができ、何を努力すればどんな行動をすれば評価されるのかも具体的で明確に示されているため、評価に対する理解と納得感が高まります。

コンピテンシー評価のデメリット

コンピテンシー評価の導入は難しい

コンピテンシー評価は、高い業績を残している従業員の行動を細かく分析して行動特性を洗い出して、それを自社オリジナルの評価項目と基準に落とし込む必要があります。
自社オリジナルなので既存のテンプレート等を活用することができず、実際に導入して運用を開始するまでに手間と時間がかかります。

環境変化に弱いので定期的な更新が必須

コンピテンシー評価は、企業の成長やビジネスモデルの変化などに柔軟に対応することができません。環境や事業内容が変化すると重要となる行動特性も変化するものなので、定期的に評価項目や基準を見直して必要があれば更新していく必要があります

コンピテンシー評価導入の流れの例

STEP
ハイパフォーマーの抽出

社内のハイパフォーマーを選ぶ上で、事前に「高い業績」とは何を指すのか、企業として何を持って業績とするのかを定義・共有しておくことが重要です。

STEP
インタビューの準備・実施

ハイパフォーマーにインタビューを行い、業績に結びついている行動特性を特定します。また標準的な業績を残している社員と比較することで、ハイパフォーマー特有の行動を抽出することが可能となります。

STEP
コンピテンシーの抽出

インタビューから得た特性がコンピテンシーとなり得るか検討・特定します。

STEP
企業戦略・ミッション・ビジョンとのすり合わせ

特定されたコンピテンシーが、企業の経営戦略やビジョンと合致するかどうかを確認します。

STEP
テスト・調整

評価基準ができあがったら、テスト評価をくり返し行い、評価基準の適正なものかそうでないかをテスト・調整していきます。また、既存の等級制度との整合も図ります。等級制度・賃金制度との連携を強めつつ、企業にとって最も良い形の評価制度を模索していきます。

STEP
コンピテンシーディクショナリの整備・見直し(適宜)

コンピテンシーディクショナリは、短期的視点で、時代や経営環境の変化とともに常に改編していくことが求められます。何か変化が生じた際は見直しを行い、コンピテンシーのマッチングを行うことを忘れないようにしましょう。

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MBO(目標管理制度)とは

MBOは「Management by Objectives」の頭文字をとった略語で組織マネジメントの概念です。直訳すると「目標による管理」「目標によるマネジメント」という意味になりますが、もともとは評価のための手法ではなく、従業員が自分自身で目標を決めて自主的に取り組むことで従業員のやる気とモチベーションアップを促すためのマネジメント手法として提唱されたものです。
企業や上司からトップダウンで目標を設定するノルマ管理とは違って、従業員が自分自身で設定した目標を自主的に進捗等を管理するため従業員が主体性を発揮して大きな成果が出る、という考え方になります。

P.F.ドラッガーとは

経営学の第一人者として「マネジメントの父」と呼ばれていて、その著書は多くの経営者や管理職などのビジネスパーソンに読まれています。分権化、民営化、知識労働者、などの用語や概念は全てドラッカーが生み出した言葉で、目標による管理(MBO)も1954年にドラッカーが著書の中で提唱した組織マネジメントの概念です。

日本におけるMBO(目標管理制度)の歴史

日本の企業にMBOが導入されるようになったのは1990年代のバブル崩壊がきっかけです。それまでの年功序列制度や終身雇用制度が見直されて成果主義・実力主義の考え方に変化していく中で、マネジメント手法としてではなく人事評価の手法として導入されていきました。

MBO(目標管理制度)とOKRの違い

OKR(Objectives and Key Result)とMBO(Management by Objectives)は目標管理の手法として同じものだと思われがちですが、似ているようで違うものになります。

項目MBOOKR
目的人事評価、業績評価、報酬の決定業務の効率化、生産性の向上
共有範囲本人と上司全従業員
測定方法定量/定性/併用定量
達成度100%の達成率60~70%の達成率
評価の頻度年に1回(もしくは半年)四半期に1回(もしくは月次)

MBO(目標管理制度)のメリット

MBO(目標管理制度)を導入することのメリットには ①従業員のモチベーションの向上 ②従業員の能力を引き出す という二つがあります。

MBO(目標管理制度)ではトップダウンではなく従業員自身で目標を設定しますが、その個人目標は企業全体の目標ともリンクしているため、従業員が自分自身の目標を達成することが企業の業績アップにつながっていると実感しやすくなり、従業員の仕事の意欲やモチベーションアップにつながります。

MBO(目標管理制度)で設定する目標は、簡単すぎず難しすぎず創意工夫して努力すれば達成できるレベルの目標を設定することがポイントで、従業員は目標を達成するために試行錯誤して自分自身の成長を図ることが求められます。そのことで従業員は能力を十二分に発揮することができます。

MBO(目標管理制度)のデメリット

MBO(目標管理制度)を導入することのデメリットや問題点としては ①ノルマ管理になってしまう ②目標設定が低くなる という二つがあります。

MBO(目標管理制度)は従業員の自主性や主体性がとても重要なポイントになるので、それを無視してただの目標管理として運用すると単なるノルマ管理になってしまい、従業員のモチベーションや生産性の低下を招きます。

MBO(目標管理制度)では従業員が目標設定するため、会社にとって必要のない低い目標設定をする可能性があります。これは要するに、従業員が自分への評価を高くするために達成しやすいレベルの目標設定をしてしまうということですが、それだと会社の業績アップにはつながりません。

MBO(目標管理制度)の実施方法と流れ

MBO(目標管理制度)を運用する手順は下記のような流れになります。

  • MBO導入の目的を明確にする
  • 目的や内容を全社に周知する
  • 企業の目標を設定する
  • 個人の目標を設定する
  • 目標を実際の行動と計画に落とし込む
  • 実行する(PDCAサイクル)
  • 進捗状況を確認する
  • 評価/フィードバック/フォローする

①MBO導入の目的を明確にする

現状の課題は何か、なぜMBOを導入するのか、どんな導入効果を期待しているのか、導入することで課題の改善を見込めるのか、などを検討して明確にします。

②目的や内容を全社に周知する

新しい制度を何も説明なく導入すると従業員の協力が得られずうまくいかない可能性が高くなりますので、従業員一人ひとりにMBOについて理解してもらうために、資料を配布したり説明会を開催したりして全社に周知します。

③企業の目標を設定する

MBOでは企業目標をもとに従業員個人の目標に落とし込みますので、従業員が目標を設定しやすくなるように、わかりやすく具体的な企業目標を設定します。

④個人の目標を設定する

企業目標が決まったらその目標をもとにして上司と部下で相談しながら従業員個人の目標を設定します。その際は「企業目標とリンクしているか」「目標が現状のレベルと合っているか」をしっかりと確認します。

⑤目標を実際の行動と計画に落とし込む

目標を達成するための具体的な行動を決めて行動スケジュールを作成しますが、ここは従業員が自主的に主体的に考えて、上司は必要に応じてアドバイスします。

⑥実行する(PDCAサイクル)

設定した目標に向けて行動スケジュール通りに実行します。その際にPDCAサイクルを回します。

⑦進捗状況を確認する

従業員が目標設定に向けて行動を開始したら、上司は問題なく進捗しているかどうかを確認するため、定期的な面談や日報を毎日確認するなどを行います。

⑧評価/フィードバック/フォローする

一定期間を終えたら、従業員自身による自己評価と上司による評価を行います。その際、評価軸と評価ポイントを明確にしておくことが重要です。

MBO(目標管理制度)で注意するポイント

MBO(目標管理制度)は業績アップを図るためのマネジメント手法として活用されることが本来の目的ですが、目標管理という言葉にとらわれて目標達成やノルマを管理するためのツールになってしまうことがあります。
そうならないためには、目標達成の可否ばかりに注目するのではなく、企業や組織の目標と個人やチームの目標をリンクさせたり、達成までのプロセスや部下の指導に関する目標を設定したりすることが大事です。

MBO(目標管理制度)が目標達成やノルマを管理するためのツールになることで発生する問題の一つに従業員のモチベーション低下があります。企業や上司から押しつけられた目標は従業員にとってはノルマと同じなので、例えノルマを達成したとしても従業員自身は達成感や満足感を得られることができません。
そうならないためには、従業員が自主的に目標を設定することが大事になるのですが、従業員自身に設定を任せると簡単な目標を設定しがちなので、企業の目標と個人の目標をリンクさせながら目標の難易度を設定することが大事になります。

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360度評価とは

360度評価は多面評価とも呼ばれる評価制度です。これまでの日本企業において採用されていた評価制度では上司が部下を評価することが一般的でしたが、360度評価では上司だけでなく評価対象の従業員の周辺にいるさまざまな立場の人(上司・同僚・部下・他部署の従業員・社内外の関係者)によって多面的な評価が行われます。

360度評価が普及する背景

働き方改革、同一労働同一賃金、テレワークの推進などの社会情勢の変化により、従来型の人事制度を見直す企業が増えてきており、ピラミッド型の組織からフラット型の組織への移行が進んでいます。それに伴って、プレイヤーとして自分の仕事を行いながら管理職としてのマネジメント業務を行うプレイングマネージャーが増えており、管理職が自らのマネジメントとしての役割を実行できているかどうかの評価が難しい現状があります。
また、テレワークなどの働き方の多様化により、上司から現場の様子が見えづらくなっていて適切な評価を行うための材料が不足している現状もあります。
さらに、人材育成において上司から部下への一方的な教育指導ではなく、本人が気づきを得て自律的に行動することが重要視されています。
これらの現状の問題を解決するための対策として360度評価が注目されています。

360度評価の目的

360度評価を行う目的の一つとしては、上司だけでなくさまざまな立場の人がさまざまな視点で評価することで、客観的で公平な評価を行うことがあります。それにより従業員の企業に対する信頼が強まってモチベーションがアップすることを期待することができます。
また、360度評価でさまざまな立場の人からの評価を聞くことで、従業員が自分自身と他者との評価の違いを明確に認識したり自身の強みや弱みに気付いたりして、従業員の意識改革も期待できます。

360度評価の対象者

360度評価を導入している企業の多くは課長や部長などの管理職を対象としていることが多いですが、360度評価のメリットである評価の客観性や公平性という面で考えると全従業員を対象とすることが必要です。
管理職は率直な評価やフィードバックを得ることが難しくなりますので360度評価のメリットが大きいですし、新人や若手の従業員は直属の上司だけでなく社内外のさまざまな立場の人から評価されることで自分自身の長所短所を知ることができます。

360度評価のメリット

客観的な評価が可能になり評価に対する納得度が高まる

従来の評価方法だと上司の評価能力に依存するので、本当に公平に評価されているのか疑いを持ったり評価結果に不満を感じたりする従業員が少なくないですが、360度評価は上司一人に依存せずさまざまな立場の複数の人が評価に参加するので、評価の公平性や客観性に対する従業員の納得度が高まります
また、直属の上司が気付いていない部下の良い点を発見して評価することができます

被評価者が自覚していない長所や短所に気づくことができる

さまざまな立場の人からの評価を聞くことで、従業員が自己評価と他人評価との違いを認識したり自分自身で自覚していない長所短所強み弱みなどの特性や改善点に気づくことができます。

企業への帰属意識と当事者意識が高まる

360度評価を導入して全従業員を対象にすることで、企業の評価基準を全従業員が知ることができるので、従業員が企業の行動規範を意識して行動するようになり、結果として企業への帰属意識と当事者意識が高まります

360度評価のデメリット

評価に一貫性がなくなる可能性がある

360度評価では評価経験のない従業員も評価をしなくてはならないので、評価に主観が多く入ったり、上司に対して厳しい評価をできなかったり、評価の一貫性がなくなる可能性があります。
また、仕事の評価ではない好き嫌いの人気投票になる可能性があります。

人間関係が悪化する可能性がある

360度評価では上司だけでなく同僚や部下も評価対象になるため、上司が部下の顔色をうかがって厳しい指導や指示ができなくなったり、同僚に嫌われないように最低限のコミュニケーションしかとらなくなったり、社内の人間関係が悪化する可能性があります。
また、従業員同士が示し合わせて実態と違う評価を行う恐れもあります。

360度評価を導入する際のポイント

360度評価導入の目的や基準を明確にする

360度評価を導入するにあたって、評価制度や賃金制度との関連性(評価や賃金に反映させるのかどうか)、評価者の匿名性、評価者の選定、評価基準などを明確にして周知することがポイントになります。また、人材育成を目的とする360度評価では賃金制度と関連させずに分けるほうが良いです。

評価内容のフィードバックを行う

360度評価ではさまざまな立場の人から評価されることになりますが、その評価の根拠がわからないと評価される立場の従業員は評価に対する納得感を得られませんので、評価結果だけでなく長所短所などの特徴や改善ポイントをフィードバックすることが大切です。

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1on1とは

1on1ミーティング(以下1on1)とは上司と部下が定期的に1対1で行う対話(ミーティング)のことです。
1on1は評価や管理のために設けられている会議や面談といった場とは異なり、1対1での「対話」をすることを目的にお互いがオープンに話し合う場として設けられているという特徴があります。

1on1の歴史

1on1はアメリカのシリコンバレーが発祥と言われています。シリコンバレーはApple・Facebook・Googleなどの有名なグローバル企業、ハイテク・ソーシャルメディア企業、何千ものスタートアップ企業が拠点を置く世界的にも有名な地域です。世界から優秀な人材が集まるシリコンバレーでは、日本では想像できないくらい激しい人材争奪戦が行われており、各企業が自社の優秀な人材を他社に流出させずに育成するための取り組みとして始められるようになったのが1on1です。
日本でもYahooが2012年に1on1を導入し、2010年代で人材育成の手法として浸透していきました。

1on1と評価者面談の違い

評価者面談は期末に一度行うのに対して、1on1は最低でも月に一度、できれば週に一度のペースで定期的に行います。
評価者面談は部下の評価や仕事の進捗管理を目的に行われるので形式も固いものになりますが、1on1は部下との対話やコミュニケーションを目的としているので、場所を会議室ではなくカフェやラウンジにしたりお菓子や軽食を食べながらリラックスして行います。

1on1の目的と期待効果

1on1の目的は、上司と部下がコミュニケーションする場を設けることで部下の悩みや不安を上司が把握して部下の育成をすることです。
部下は仕事を通して得た成功経験や失敗経験を振り返りつつ上司にフィードバックすることで、その経験からの学びを得てさらなる成長につなげることができ、上司は部下と定期的に話しをすることにより、部下のスキルアップやキャリアアップに関する考えの変化を把握することができ、適時対応することができます。

これまでは期末にある評価者面談や注意・指導の場でしか上司と部下が話す場はありませんでした。しかし評価者面談や指導の場面では部下の意見や想いをなかなか引き出すことは難しいです。
1on1を導入することで「上司の一方的なコミュニケーション」から「上司と部下の対話するコミュニケーション」が実現し、人材育成や職場環境改善につながります。

1on1で注意すべきポイント

  • 1on1は上司と部下の間に最低限の信頼関係を構築できていることが大前提になりますので、導入する前に上司の方から部下に対してコミュニケーションをとることで信頼関係の構築を図りましょう。
  • 1on1はこれまでの評価面談より上司と部下ともに時間をとられますので、しっかりと1on1の目的を共有することが重要になります。
  • 部下の状況に合わせて適切な頻度と時間を設定することで、部下から「参加したくない」「時間を取られたくない」という不満でないように留意します。

1on1を実施する方法

具体的に1on1を実施するときの流れは下記ステップのようになります。

STEP
目的を周知する

1on1は「部下の成長のためのミーティング」で「部下を育成する」ことが目的です。
効果的に実施するために、対象の部下にしっかりと目的を周知します。
1on1は時間を取られる取り組みなので「時間を取られたくない」と反発する部下もいますが、目的と意義をしっかりと伝えて理解してもらうことが必要です。

STEP
スケジュールを設定する

スケジュールは上司が設定しても部下が設定してもどちらでも問題ありません。
ただし、都度設定にすると優先度が下がる可能性があるので、定期的な予定としてスケジュールします。
その際、どうしても都合がつかない場合は必ず日程変更するというルールを徹底します。
ちなみに、休日前後(月曜日や金曜日)は会議の内容が忘れられてしまったり実践できなかったりするので、水曜日か木曜日に開催するのがおすすめです。時間帯は朝は業務が立て込むことがあるので午後が良いです。

STEP
1on1の実施とフィードバックをする

部下からすると一度話した内容を上司から何度も質問されるとうんざりするものです。一度話した内容を忘れないためにも、1on1をただの雑談にしないためにも、議事録をしっかり作り1on1で話した内容を記録することが大切です。その際、自分用のメモではなくお互いで共有できる議事録の方が認識の齟齬(そご)を防げるため効果的です。

STEP
1on1を継続する

1on1を実施して最初のうちは上司も部下もその効果に疑問を持つことがあると思いますが、適切な頻度でスケジュールを設定して、適度な時間でミーティングを行い、フィードバックと議事録の作成&共有を行い、しっかりと継続することで日常のコミュニケーションの量や質が変わってくることを実感できます。

1on1実施上のポイント

1on1を効果的に実施するためには、しっかりと本音を聞き出せるコミュニケーションを取ることが重要です。うなずくなどのボディランゲージや相手の目を見ることで、相手に「あなたの話をしっかり聞いていますよ」「興味がありますよ」と示す聞き方をします。また、上司は部下が話し出す悩みに対して、すぐに答えを出さないことが重要です。まずは相手の言葉にじっくりと耳を傾けましょう。

部下は自分の言葉で話しきることで自分の思考の整理をすることができ、話をしっかり聞いてもらえることで上司に対して安心感と信頼感を抱きます。
上司は質問を通して自身の価値観について自発的に本人に気付かせてあげましょう。部下自身が自分の価値観・考え方を理解することで自然とパフォーマンスも向上していきます。

最後にまとめ

この記事では人事制度の新たな手法として、コンピテンシー評価・MBO(目標管理制度)・360度評価・1on1を取り上げました。人事制度の手法は新しければ良いというものではなく、その時代に合ったもので且つ会社の文化や考え方などに適したものを選ぶことが肝要です。
新しい手法に飛びつくのではなく「自社に合った人事制度は?」「自社の社員がパフォーマンスを発揮できる手法は?」と考えることが大切です。

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