中小企業の人事評価制度の設計方法|決めるべき7つのこと

人事評価制度の設計方法|中小企業が決めるべき7つのこと

「人事評価制度を作りたいけれど、何から決めればよいか分からない」

「評価シートは作ったものの、これで制度として完成なのだろうか」

中小企業が人事評価制度を設計するとき、最初に評価項目や評価シートを考えるケースは少なくありません。

しかし、人事評価制度の設計で決めることは、評価シートだけではありません。

たとえば、社員から次のように聞かれたらどうでしょうか。

「主任になるには、何ができればいいですか?」

「私の仕事は何を基準に評価されますか?」

「3点と4点は何が違うのですか?」

「評価が上がったら給与はどうなりますか?」

「誰が私を評価するのですか?」

評価シートが完成していても、こうした質問に答えられなければ、人事評価制度としてはまだ決めるべきことが残っています。

人事評価制度を設計するということは、

社員に何を求めるのか

何を基準に評価するのか

評価結果をどのように処遇へつなげるのか

までを決めることです。

この記事では、「どの順番で作ればよいか」という一般的な作り方ではなく、

人事評価制度が完成したとき、会社として何が決まっていなければならないのか

という視点から、中小企業が人事評価制度の設計で決めるべき7つのことを解説します。

目次

人事評価制度の設計とは?評価シートを作るだけではない

人事評価制度を設計しようとすると、

「評価項目は何個にする?」

「5段階評価にする?」

「責任感や協調性を入れる?」

といった話から始まりがちです。

しかし、評価項目を決める前に考えておきたいことがあります。

たとえば、

「後輩を指導する」

という評価項目を作ったとします。

では、入社したばかりの社員にも後輩指導を求めるのでしょうか。

主任になったら求めるのでしょうか。

課長であれば、後輩一人への指導ではなく、部門全体の人材育成まで求めるのでしょうか。

社員に求める役割が決まっていなければ、適切な評価基準も決められません。

そのため、人事評価制度の設計では、

「何を評価するか」の前に、「誰に何を求めるか」を決める必要があります。

そして、その評価結果を昇給や賞与へ反映するのであれば、賃金制度とのつながりも考えなければなりません。

つまり、

役割を決める → 評価する → 処遇へつなげる

ところまで考えることが、人事評価制度の設計です。


人事評価制度を設計する前に「完成した状態」を考える

人事評価制度を設計するときに、いきなり評価項目を考える必要はありません。

まず、

「制度が完成したら、誰に何を説明できる状態になっていたいか」

を考えてみましょう。

たとえば、次のような状態です。

相手説明できること
社員自分に求められている仕事・役割
社員何を基準に評価されるのか
社員どうすれば次の役割へ進めるのか
評価者何を見て何点を付けるのか
経営者評価を給与へどう反映するのか
経営者制度導入後に人件費がどう変わるのか
人事担当者いつ・誰が・どのように評価するのか

この状態から逆算すると、人事評価制度を設計するときに決めるべきことが見えてきます。

ここからは、その内容を7つに分けて見ていきます。

人事評価制度の設計で決めるべき7つのこと

1|社員を何段階に分け、それぞれに何を求めるのか

最初に決めたいのが、社員に求める役割の段階です。

たとえば、

一般社員
↓
主任
↓
係長
↓
課長

と役職だけを並べても、それぞれの違いが分からなければ評価には使えません。

重要なのは、

「その段階の社員には、どこまでの仕事を求めるのか」

を決めることです。

たとえば6段階なら、次のように考えられます。

段階求める役割の例
1上司の指示・指導のもとで基本業務を行う
2担当する標準業務を一人で完了する
3担当業務を行いながら後輩を指導する
4チームの進捗・品質を確認し、必要な指導を行う
5部門の計画・人員・業務・成果を管理する
6複数部門や組織全体を統括する

こうして役割の違いを決めるのが、等級制度です。

等級制度が明確になれば、

「主任になるには何ができればよいのか」

「一般社員と管理職では何が違うのか」

を説明しやすくなります。

役職と等級は同じとは限らない

中小企業では、現在ある役職をそのまま等級として使おうとする場合があります。

しかし、

「主任だけれど実際には後輩指導をしていない」

「課長という肩書はあるが部門管理はしていない」

ということもあります。

そのため、現在の役職名だけを見るのではなく、

実際にどのような役割を担っているか

を確認して等級を設計することが重要です。

2|どこまで職種を分けて評価するのか

次に決めるのが、評価する職種の区分です。

社員20名の会社でも、

営業

事務

製造

配送

など、仕事内容が異なる場合があります。

ここで考えたいのが、

「どこまで同じ評価基準を使えるか」

です。

たとえば、

「責任感がある」

「協調して仕事をする」

といった項目は、全社員共通に設定できるかもしれません。

しかし、それだけでは、

営業担当者が顧客へ適切な提案をできているか。

製造担当者が決められた品質で作業できているか。

事務担当者が正確に請求処理できているか。

といった実際の仕事内容を評価できません。

そこで、

職種を問わず求める行動

と、

職種ごとに求める仕事

を分けて考えます。

ただし、職種を細かく分ければよいわけではありません。

細分化しすぎれば評価シートの種類が増え、管理が複雑になります。

反対にまとめすぎれば、実際の仕事を評価できなくなります。

職種を分けるときには、

「仕事内容が違うため、評価する基準も変える必要があるか」

という視点で判断します。

3|その職種・役割で「何ができれば標準なのか」

等級と職種を整理したら、具体的な評価項目・評価基準を設計します。

ここで最初から「優秀な社員」を基準にしないことがポイントです。

まず決めたいのは、

「この職種・この役割の社員なら、ここまではできてほしい」

という標準です。

たとえば営業職の「顧客対応」を評価するとします。

「顧客に適切に対応している」

だけでは、評価する人によって「適切」の判断が変わります。

そこで、

「顧客からの問い合わせ内容を確認し、担当範囲について必要な回答・対応を行うことができる。」

というように、実際の仕事で確認できる状態まで具体化します。

抽象的な言葉だけで終わらせない

評価基準では、

「積極的に」

「適切に」

「意欲的に」

「十分に」

といった言葉だけで評価しようとすると、評価者の感覚に左右されやすくなります。

できるだけ、

何を確認するのか

何を実行するのか

が分かる基準にします。

これによって、社員自身も「何をできるようになればよいのか」を理解しやすくなります。

4|何点なら「求める役割を果たしている」のか

評価項目が決まったら、次に点数の基準を設計します。

5段階評価なら、

5点
4点
3点
2点
1点

と点数を付けることになります。

しかし、点数だけ用意しても、

「何となく良かったから4点」

「普通だから3点」

では、評価者によって点数が変わります。

そこで最初に決めたいのが、

標準点です。

たとえば3点を、

「その等級・職種として会社が求めている役割を果たしている状態」

とします。

その標準を継続的に上回る状態を4点・5点。

標準に届いていない状態を2点・1点。

というように整理します。

人事評価制度を設計するときには、

「評価項目を何にするか」だけではなく、「何ができれば何点なのか」まで決める

ことが重要です。

5|評価結果を給与・賞与へどう反映するのか

ここからは、評価シートの外側の設計です。

社員から、

「A評価になったら何が変わるのですか?」

と聞かれた場合、答えられるでしょうか。

評価制度を昇給や賞与へ利用するのであれば、

評価結果と処遇の関係

を決めておく必要があります。

たとえば、

評価結果
↓
評価ランク
↓
昇給額
↓
翌年度の基本給

という関係です。

賞与へ反映する場合には、賞与の算定方法も決めます。

給与表だけではなく、人件費まで確認する

賃金制度を設計するときに注意したいのが、

制度を導入した後の人件費

です。

たとえば高評価者が想定以上に多かった場合、翌年度の人件費はいくら増えるでしょうか。

昇格する社員が増えた場合はどうでしょうか。

1年後だけでなく、3年後、5年後にも無理なく給与を支払い続けられるでしょうか。

人事評価制度では、

社員をどう評価するか

と同時に、

会社がその処遇を継続できるか

も確認する必要があります。

そのため、基本給表や昇給ルールを作ったら、現在の社員を当てはめて人件費をシミュレーションします。

6|誰が・いつ・どのように評価するのか

評価項目と評価基準が完成しても、まだ人事評価制度は完成ではありません。

次に決めるのが運用方法です。

たとえば、

  • 評価期間はいつからいつまでか
  • 目標設定をいつ行うか
  • 自己評価を行うか
  • 一次評価者は誰か
  • 二次評価者を設けるか
  • 評価面談をいつ行うか
  • 誰が最終評価を決定するか
  • いつ昇給・賞与へ反映するか

などです。

特に評価者が複数いる会社では、

「A課長は4点を付けるが、B課長なら3点を付ける」

という違いが生じる可能性があります。

評価基準を作るだけでなく、

「この会社では3点をどのように判断するのか」

という認識を評価者間でそろえる必要があります。

評価者研修や評価会議を行うのも、このばらつきを減らす方法の一つです。

7|完成した制度を社員へどう説明するのか

最後に決めたいのが、社員への説明です。

制度を作った経営者や人事担当者は、何度も打ち合わせをしているため内容を理解しています。

しかし社員からすると、ある日突然、

「来月から新しい人事評価制度を始めます」

と伝えられることになります。

そのため導入前に、

なぜ制度を導入するのか

何が変わるのか

自分は何を評価されるのか

評価結果は何に使われるのか

給与にはどう反映されるのか

いつから始まるのか

を説明できる状態にします。

人事評価制度は、

制度資料が完成したときではなく、社員・評価者が理解して運用できる状態になって初めて導入できます。

人事評価制度を設計すると、最終的に何が完成する?

ここまで紹介した7つの設計内容を、実際に会社で使用する資料へ置き換えてみましょう。

決めること主な完成物
社員に求める役割等級表・等級定義
職種の分け方職種区分
求める仕事評価項目
点数の基準評価基準・評価シート
評価と処遇の関係基本給表・昇給ルール・賞与ルール
評価方法評価運用ルール・面談シート
社員への説明人事制度説明資料

このように整理すると、

「人事評価制度を設計する=評価シートを作る」ではない

ことが分かります。

評価シートは、人事評価制度を構成する資料の一つです。

役割・評価・処遇・運用までつながって、初めて実際に使える制度になります。

30名程度の中小企業はどこまで細かく設計すればよい?

人事評価制度は、細かくしようと思えばいくらでも細かくできます。

たとえば、

10以上の等級を作る。

職種を細かく分類する。

一つの評価シートに何十項目も設定する。

複雑な昇給計算を作る。

こうすれば精密な制度に見えるかもしれません。

しかし、社員30名程度の会社で運用する場合、その複雑さが本当に必要でしょうか。

反対に、

「小さい会社だから全員同じ評価シートでよい」

としてしまうと、営業・事務・製造など仕事内容の違いを十分に評価できない可能性があります。

中小企業の人事評価制度で重要なのは、

「できるだけ簡単にする」ことではなく、「必要なところだけ具体的にする」ことです。

たとえば、

等級は、実際に役割が変わる段階で分ける。

職種は、仕事内容や評価基準が異なるところで分ける。

評価項目は、社員に本当に求めたい仕事に絞る。

評価基準は、実際の行動を確認できるところまで具体化する。

賃金制度は、社員へ説明できる仕組みにする。

このように設計すれば、必要以上に制度を大きくせず、自社に必要な部分を具体化できます。

人事評価制度を設計できているか「5つの質問」で確認

ここまで制度を作ったら、資料の枚数ではなく、次の質問に答えられるか確認してみてください。

質問1

「私は何ができるようになれば、次の等級へ上がれますか?」

社員へ説明できるでしょうか。

質問2

「なぜ私はこの項目が3点なのですか?」

評価者は、評価基準を使って説明できるでしょうか。

質問3

「営業と事務では仕事内容が違いますが、何を評価されますか?」

職種ごとの違いを説明できるでしょうか。

質問4

「評価が上がったら給与はどうなりますか?」

評価と昇給・賞与の関係を説明できるでしょうか。

質問5

「誰が評価を決めるのですか?」

一次評価、二次評価、最終決定まで説明できるでしょうか。

すべて説明できるのであれば、人事評価制度の主要な部分はかなり整理されています。

反対に、

「そこまではまだ決めていない」

という質問があれば、そこが追加で設計したい部分です。

人事評価制度の完成度は、資料が何枚あるかではなく、社員や評価者からの質問に説明できるかという視点で確認できます。

人事評価制度をゼロから設計する必要はない

ここまで読むと、

「これを全部自社で一から考えるのは大変そう」

と感じるかもしれません。

しかし、人事評価制度のすべてを白紙から考える必要はありません。

人事評価制度には、

会社ごとに決めなければならない部分

と、

共通する仕組みを活用できる部分

があります。

たとえば、

「どのような職種があるのか」

「社員にどのような役割を求めるのか」

「どの仕事を評価したいのか」

といったことは、自社でなければ決められません。

一方で、

等級制度の基本構成

評価シートの形式

評価基準の作り方

面談シート

基本給表の形式

人件費シミュレーション

などは、制度設計の土台を活用できます。

つまり、

すべてをゼロから作るのではなく、制度の土台を利用しながら、自社で決めるべき部分を具体化する

という方法があります。

この考え方なら、人事制度専任の担当者がいない中小企業でも制度設計を進めやすくなります。

評価シートの完成形から人事評価制度を考えてみる

これから人事評価制度を設計する場合、

最初からすべての制度を考えるのが難しければ、

「最終的にどのような評価シートを使うのか」

を見てから考える方法もあります。

完成した評価シートを見ると、

どのように職種を分けるのか。

等級によって何が変わるのか。

どのような評価項目を設定するのか。

3点・5点・1点をどう分けるのか。

といった制度設計のイメージをつかみやすくなります。

人事評価制度の完成イメージを見てみませんか?

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JINJIPACKでは「自社で決める部分」に時間を使って人事制度を設計

JINJIPACKは、中小企業向けの人事制度設計サービスです。

人事制度に必要となる、

等級制度

評価制度

賃金制度

をまとめて設計します。

特徴は、すべてを白紙から作るのではなく、制度設計の土台を用意していることです。

たとえば、

等級の基本構成

評価項目の候補

評価シート

面談シート

基本給表

各種シミュレーション

などの土台を利用しながら、

「自社では何を求めるのか」

を一緒に決めていきます。

標準設定は、

6等級以下

5職種以下

従業員50名以下

です。

等級・評価・賃金制度を一つの流れで設計することで、

何を求めるか → どう評価するか → どう処遇するか

をつなげていきます。

人事評価制度の設計は「何を決めれば完成なのか」から考える

人事評価制度を設計するときには、評価シートを作ることだけを目的にしないことが重要です。

最終的には、

1.社員を何段階に分け、それぞれに何を求めるのか

2.どこまで職種を分けて評価するのか

3.その職種・役割で何ができれば標準なのか

4.何点なら求める役割を果たしているのか

5.評価結果を給与・賞与へどう反映するのか

6.誰が・いつ・どのように評価するのか

7.完成した制度を社員へどう説明するのか

まで決めます。

その結果として、

等級表

評価シート

基本給表

昇給・賞与ルール

面談シート

人事制度説明資料

などが完成します。

人事評価制度の設計で大切なのは、複雑な制度を作ることではありません。

経営者・評価者・社員が、それぞれ「何をすればよいのか」を説明できる制度にすることです。

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