人事評価制度を見直すことになった。
そこで、現在使っている評価シートを開き、
「どの項目を変更しようか」
と考え始める。
実は、その前に確認してほしいものがあります。
前回の評価結果です。
たとえば、ある社員の評価結果が72点だったとします。
ここで確認したいのは、72点という数字そのものではありません。
「なぜ72点だったのか?」
「どの仕事が評価されたのか?」
「本人へ72点の理由を説明できるのか?」
「次回80点を目指すなら、何が変わればよいのか?」
ということです。
これらを順番に確認すると、
評価項目を変える必要があるのか。
評価基準を具体的にする必要があるのか。
社員へ求める役割を整理する必要があるのか。
評価する人を変える必要があるのか。
給与への反映方法を整理する必要があるのか。
が見えてきます。
人事評価制度の見直しは、新しい評価シートを作るところから始める必要はありません。
「前回の評価を、もう一度説明してみる」
ところから始める方法があります。
まず前回の評価シートを1人分用意する
できれば、
「評価しやすかった社員」
ではなく、
評価者が点数を付けるときに迷った社員
を1人選びます。
そして、その社員の評価シートを見ながら、評価者へ質問します。
「この3点は、何を見て3点にしましたか?」
すぐに答えられるでしょうか。
たとえば、
「普通にできていたから」
「特に問題がなかったから」
「だいたいこのくらいだと思ったから」
という答えであれば、見直す場所が一つ見つかります。
点数は付いているものの、
その点数を付けた根拠が言葉になっていない
状態です。
この場合、評価項目を変更する前に、3点がどのような仕事の状態なのかを具体的にする必要があります。
「なぜ3点?」に答えられないなら、評価基準を直す
たとえば評価項目が「報告・連絡・相談」だったとします。
3点の基準が、
適切に報告・連絡・相談を行っている。
だけでは、評価者によって「適切」の捉え方が変わります。
そこで、実際の仕事に戻します。
たとえば、
担当業務の進捗や発生した問題を確認し、必要な内容を上司へ報告することができる。
という基準であれば、
「何を見て評価するのか」
が具体的になります。
人事評価制度を見直す際、項目名を変更することばかりに目が向きがちですが、
項目はそのままでも、その下にある基準を変えるだけで評価しやすくなる
ことがあります。
「この項目、今も必要?」と思ったら仕事内容を確認する
次に、評価シートの項目を一つずつ見ながら、
「この仕事は、今も本人に求めていますか?」
と確認します。
たとえば、制度を作った当時は担当していた仕事が、現在は別部署へ移っているかもしれません。
システム導入によって、作業そのものがなくなっていることもあります。
反対に、制度を作った後に増えた仕事が評価シートへ反映されていないこともあります。
評価シートには、
昔は重要だった仕事
と、
今は重要になった仕事
が混在していることがあります。
人事評価制度を見直すなら、まずこの入れ替わりを確認します。
新しい項目を増やすだけでなく、
「もう評価しなくてよい仕事」を外す
ことも必要です。
高い点数なのに「次に何を任せるか」が分からない場合
ある社員が、ほとんどの項目で4点や5点を取っていたとします。
では、その社員には次に何を求めるのでしょうか。
ここで、
「今と同じ仕事を、もっと頑張ってもらう」
しか答えが出てこない場合があります。
この場合、評価点ではなく、
役割のつながり
を確認した方がよいかもしれません。
たとえば一般社員なら、自分の担当業務を一人で完了する。
その次の段階では、通常とは異なる状況にも対応する。
さらに役割が上がれば、後輩の仕事を確認して指導する。
リーダーになれば、チームの進捗や仕事の状態を確認する。
というように、会社から求める範囲を変えていきます。
高評価を取った社員に、
「次は何ができるようになってほしいか」
を説明できなければ、評価シートだけではなく、等級や役割の設定を確認する必要があります。
低い点数なのに「何を直せばよいか」が分からない場合
反対に、評価が低かった社員について考えてみます。
本人から、
「次回は何を改善すれば3点になりますか?」
と聞かれたら、具体的に答えられるでしょうか。
たとえば「主体性」が2点だったとして、
「もう少し主体的に行動してください」
だけでは、本人は次に何をすればよいのか分かりません。
この場合は、
どのような場面で。
何を確認して。
何を自分から行うことを求めているのか。
まで具体的にします。
評価制度の見直しでは、
低評価の理由を説明できるか
だけではなく、
「どうなれば標準に戻るのか」を説明できるか
まで確認します。
1次評価と2次評価で点数が違った項目を探す
次に確認したいのが、評価者間で点数が変わった項目です。
たとえば、
1次評価者 4点
2次評価者 3点
となっている項目があったとします。
大切なのは、
「最終的にどちらの点数を採用したか」
だけではありません。
なぜ1点違ったのか
を確認します。
1次評価者と2次評価者が見ていた仕事が違った。
3点の認識が違った。
評価期間中の情報量が違った。
そもそも2次評価者が本人の仕事を十分に確認できていなかった。
など、理由はいくつか考えられます。
この違いを確認すると、
評価基準を直すべきなのか。
評価者へ基準を共有すべきなのか。
評価者の設定自体を変えるべきなのか。
が判断しやすくなります。
点数が割れた項目は、制度からの「ここを確認してほしい」というサイン
として使えます。
部署ごとに点数の付き方が違うなら、社員ではなく評価者を見る
次は、個人ではなく部署単位で評価結果を見ます。
たとえば、
営業部では4点が多い。
管理部では3点が多い。
製造部では5点がほとんど付かない。
という違いがあったとします。
もちろん、実際の仕事や成果の違いによって評価結果が変わることはあります。
ただし、
「営業部長は、問題なくできていれば4点」
「管理部長は、問題なくできていれば3点」
というように、評価者ごとに基準の使い方が違っている可能性もあります。
この場合、
評価項目を新しくすることより、
「3点をどう扱うか」を評価者間で合わせる
方が先です。
評価結果を並べると、評価シートだけを見ていても気づきにくい問題が見えることがあります。
面談で説明しにくかった項目に印を付ける
評価面談も、制度を見直す材料になります。
評価者へ、
「前回の面談で、社員へ説明しにくかった項目はありましたか?」
と聞いてみます。
たとえば、
「なぜ3点なのか説明しにくかった」
「本人は4点だと思っていて話が合わなかった」
「評価項目の意味について質問された」
「評価は高いのに昇給額について説明できなかった」
という項目があれば、そこに印を付けます。
評価表を作っているときには問題なく見えた文章でも、
本人へ説明しようとすると曖昧さに気づく
ことがあります。
そのため、評価制度を見直す際は、評価シートだけでなく、
前回の評価面談でどこに説明時間がかかったか
も確認材料になります。
「評価は良かったのに、なぜ昇給しないの?」で止まる場合
評価内容については説明できた。
ところが最後に、
「評価が良かったのに、昇給額はなぜこの金額なのですか?」
と聞かれて説明できない。
この場合、評価シートの問題ではありません。
評価結果と給与の間にあるルールを確認します。
たとえば、
評価点によって昇給額を変えるのか。
評価ランクで昇給を決めるのか。
等級ごとに基本給の範囲を設定するのか。
昇格した場合に基本給をどう扱うのか。
賞与と昇給では評価結果の使い方を変えるのか。
といった部分です。
評価制度だけを細かく作っても、
その結果を会社がどう扱うのか
が決まっていなければ、評価後の説明で止まってしまいます。
この場合は、人事評価制度だけではなく賃金制度とのつながりを確認します。
ここまで確認してから「何を変えるか」を決める
前回の評価結果を確認すると、同じ「人事評価制度の見直し」でも、会社によって直す場所が違うことが分かります。
たとえば、
| 前回の評価で起きていたこと | 確認する場所 |
|---|---|
| 3点の理由を説明できない | 評価基準 |
| 今の仕事と項目が合わない | 評価項目 |
| 高評価の次に何を求めるか不明 | 等級・役割 |
| 1次・2次評価で大きく点数が違う | 評価基準・評価者 |
| 部署によって点数の付け方が違う | 評価者間の基準共有 |
| 面談で評価理由を説明できない | 評価基準・面談方法 |
| 高評価と昇給の関係を説明できない | 賃金制度 |
ここで初めて、
「今回はどこを直すのか」
を決めます。
評価シートの項目を数個変更すればよい会社もあります。
3点の基準を具体化するだけでよい会社もあります。
評価者への説明をやり直す会社もあります。
等級・評価・賃金まで整理し直した方がよい会社もあります。
人事評価制度の見直しで大切なのは、
変更箇所を増やすことではなく、実際に困っている場所と修正する場所を一致させること
です。
見直し前と見直し後を1項目だけ比べてみる
たとえば現在、次のような評価項目があるとします。
見直し前
項目:業務遂行
3点
担当業務を適切に遂行している。
この文章では、
「適切とは何か」
が評価者によって変わる可能性があります。
そこで実際に求める仕事を確認します。
見直し後
項目:担当業務の遂行
3点
担当業務の内容・期限・進捗を確認することができる。予定に沿って業務を進め、遅れや問題がある場合は上司へ報告することができる。
ここで行っているのは、
「業務遂行」という項目の名称を変えることが目的ではありません。会社が3点として求めている仕事を、具体的な文章にすることが大切です。
会社が3点として求めている仕事を文章にしただけです。
人事評価制度の見直しでは、このように1項目ずつ、
「実際には何を評価したいのか」
まで戻って考えます。
人事評価制度を見直すなら、前回の「困ったところ」から始める
人事評価制度を見直すために、最初から理想の制度を考える必要はありません。
まず前回の評価を1人分取り出します。
そして、
なぜこの点数なのか。
本人へ理由を説明できるか。
低い点数なら、何ができれば3点になるのか。
高い点数なら、次に何を求めるのか。
評価結果を給与へどう反映したのか。
を確認します。
答えに詰まったところがあれば、そこが見直し候補です。
評価基準なのか。
評価項目なのか。
等級・役割なのか。
評価者なのか。
給与とのつながりなのか。
修正する場所を決めてから手を入れます。
人事評価制度の見直しは、「新しく作る作業」ではなく、「前回うまく説明できなかったところを、次回は説明できる状態にする作業」と考えることもできます。
JINJIPACKでは等級・評価・賃金をつなげて確認します
JINJIPACKでは、人事評価制度だけを切り離して考えるのではなく、
等級制度
評価制度
賃金制度
をつなげて設計します。
たとえば、
「評価基準が曖昧」
という問題であれば、職種・等級ごとに求める仕事を整理し、3点となる標準を具体化します。
「高評価の次が分からない」
のであれば、上位等級で求める役割を確認します。
「評価と給与の関係を説明できない」
のであれば、基本給や昇給とのつながりを確認します。
現在の制度で困っているところを確認しながら、必要な範囲を整理していきます。
今の人事評価制度、どこを見直せばよいか迷っていませんか?
まずは前回の評価シートを1枚開いてみてください。
そして、
「なぜこの点数だったのか?」
を説明してみます。
そこで説明に迷ったところから、見直しを始められます。




