人事評価制度への不満を評価シートで検証|自己評価と上司評価が違う理由

人事評価制度への不満を評価シートで検証|自己評価と上司評価が違う理由

「これだけ仕事をしたのに、なぜ3点なのですか?」

人事評価制度への不満は、評価結果を伝えたときに表面化することがあります。

社員は、自分が担当した仕事や努力した内容をもとに評価を考えます。一方、会社は職種や等級に応じて設定した評価基準をもとに点数を付けます。

両者が同じ仕事を見ていても、評価する内容が一致していなければ、点数に違いが生まれることがあります。

では、実際にどのような違いがあるのでしょうか。

この記事では、社員20名の架空の会社を例に、営業サポート職の評価シートを使って考えます。

自己評価と上司評価の点数だけを比較するのではなく、どの仕事を、どの基準で評価したのかを具体的に確認していきます。

目次

まず確認したい5点から1点までの評価基準

人事評価制度では、5段階評価を採用している会社があります。

今回は、3点を標準とする5段階評価を例に説明します。

点数評価基準判断の目安
5点標準を大きく上回る3点の基準を十分に満たし、求められる水準を大きく上回る仕事ができている
4点標準を上回る3点の基準を満たし、一部で標準を上回る仕事ができている
3点標準その職種・等級で求められる仕事ができている
2点標準をやや下回る求められる仕事の一部に不足があり、改善が必要な状態
1点標準を大きく下回る求められる仕事に大きな不足があり、継続的な指導や改善が必要な状態

※上記は本記事で使用する評価基準の例です。実際の点数設定は会社によって異なります。

ここで重要なのは、3点は低い評価ではなく、その職種・等級で求められる仕事ができている状態ということです。

また、4点や5点は、単に仕事量が多かった、忙しかったという理由だけで決まるものではありません。会社がその評価項目で何を求めているかによって判断します。

この基準を踏まえて、実際の評価シートを見ていきます。

営業サポート職Aさんの評価結果

Aさんは入社4年目の営業サポート職です。日常業務では、見積書の作成、受注データの入力、納期確認、営業担当者からの問い合わせ対応を担当しています。

今回の評価期間では、通常業務に加えて、繁忙期に他の社員の仕事を手伝い、急ぎの依頼にも対応しました。Aさんは、仕事に十分取り組めたと考え、複数の項目で高い自己評価を付けました。

しかし、上司の評価は異なっていました。

自己評価と上司評価の比較

評価項目自己評価上司評価
①見積書の作成5点3点
②受注データの処理4点3点
③納期変更への対応5点3点
④チーム内の業務協力5点5点

※評価点は説明用の架空の数値です。

Aさんは、①〜③の項目で自分の評価より上司の評価が低いことに不満を感じました。

一方、④の「チーム内の業務協力」は、自己評価と上司評価が一致しています。

この結果を見て、Aさんの自己評価が高すぎると判断することはできません。また、上司の評価が正しいとも限りません。

そこで、4つの評価項目を一つずつ確認します。

①見積書の作成|件数が多ければ5点になるのか

Aさんは、通常より多くの見積書を作成したことを理由に、自己評価を5点としました。

一方、上司は3点と評価しています。

ここで、会社が設定していた評価基準を確認します。

評価基準の例

3点:標準

担当する見積書について、必要な数量・単価・取引条件を確認し、指定された期限内に正確に作成することができる。

5点:標準を大きく上回る

複数の見積依頼が重なった場合でも、提出期限や依頼内容を踏まえて作業の優先順位を判断し、必要な調整を行いながら、見積書を正確に作成することができる。

この基準では、3点と5点の違いは、単純な作成件数ではありません。

複数の依頼が重なったときに、Aさん自身が優先順位を判断し、必要な調整を行えたかが評価の違いになります。

Aさんが多くの見積書を作成していても、上司が決めた順番に沿って処理していたのであれば、3点に該当する可能性があります。

反対に、Aさん自身が依頼内容と期限を比較し、営業担当者と調整して提出を完了していたのであれば、5点基準に該当するかを確認する必要があります。

「多くの仕事をした」という事実と、「5点で求める仕事ができた」という判断は、必ずしも同じではありません。

なお、会社が処理件数も評価したいのであれば、件数を評価する項目や目標を別途設定する方法もあります。

②受注データの処理|ミスがなければ何点なのか

Aさんは、評価期間中に受注入力のミスがなかったため、自己評価を4点としました。

上司は3点と評価しています。

ここでも評価基準を確認します。

評価基準の例

3点:標準

受注内容と注文書を照合し、数量・単価・納期などを確認したうえで、受注データを正確に入力することができる。

5点:標準を大きく上回る

受注内容に不明点や不整合がある場合、関係資料を確認し、営業担当者などと必要な調整を行い、正しい内容を確定したうえで受注処理を完了することができる。

この場合、ミスなく入力できたことは3点の基準に含まれています。

Aさんが考えていた「ミスなく処理できたから4点」という判断と、会社が設定した3点の基準に違いがあったことになります。

ただし、Aさんが不明点や不整合のある注文にも対応していたのであれば、その仕事内容を確認する必要があります。

ここで注意したいのは、ミスがなかったことを軽く扱うわけではないという点です。

受注データを正確に処理することは重要な仕事です。

その重要な仕事を、会社が標準として求めているのであれば、3点で評価することになります。

評価点を考える際には、仕事の重要性と、設定された基準に対する達成状況を区別する必要があります。

③納期変更への対応|対応したことと判断したことの違い

Aさんは、急な納期変更の依頼に何度も対応しました。そのため、自己評価を5点としています。

上司は3点でした。

この項目では、対応した件数だけでなく、どのような対応を行ったかを確認します。

評価基準の例

3点:標準

納期変更の依頼内容を確認し、上司や営業担当者の指示に従って関係先への連絡やデータ修正を行うことができる。

5点:標準を大きく上回る

納期変更による他の案件への影響を確認し、関係者と調整したうえで、担当範囲の対応方法を判断し、必要な変更処理を完了することができる。

Aさんが急な依頼を何度も処理したとしても、対応方法を上司が決めていたのであれば、3点に該当する可能性があります。

一方、納期変更が他の案件に与える影響を確認し、関係者と調整して対応方法を決めていたのであれば、5点基準に該当する可能性があります。

ここで評価したいのは、単に忙しかったかどうかではありません。

変更が発生したときに、どこまで自分で確認・判断・調整したかです。

なお、この基準はあくまで架空の例です。実際には、Aさんの等級でどこまでの判断を求めるかに合わせて設定する必要があります。

④チーム内の業務協力|自己評価と上司評価が一致した項目

最後は、自己評価も上司評価も5点だった「チーム内の業務協力」です。

Aさんは繁忙期に他の社員の仕事を手伝いました。しかし、単に手伝ったという事実だけで5点にしたわけではありません。

評価基準の例

3点:標準

自分の担当業務を進めながら、周囲から協力を求められた場合には、対応可能な範囲で必要な作業を行うことができる。

5点:標準を大きく上回る

自分の担当業務の進捗を確認しながら、周囲の業務状況を把握し、作業が遅れている社員に自ら声をかけ、必要な支援を行うことができる。

今回、Aさんは自分の仕事を終えた後、入力作業が遅れている社員に自ら声をかけ、処理を手伝っていました。

上司もその行動を確認していたため、5点と評価しました。

この項目では、Aさんが評価してほしいと考えていた仕事と、会社が5点として求める仕事が一致しています。

このように、自己評価と上司評価が一致した項目を確認することも、評価基準がどのように使われているかを理解する材料になります。

4項目を比較すると、点数が違った理由が見えてくる

Aさんの評価を整理すると、次のようになります。

評価項目Aさんが重視したこと会社が5点として設定したこと
見積書の作成通常より多く作成した複数依頼の優先順位を判断・調整した
受注データの処理入力ミスがなかった不整合を確認し、必要な調整を行った
納期変更への対応急な変更に何度も対応した影響を確認し、対応方法を判断した
チーム内の業務協力他の社員の仕事を手伝った周囲の状況を把握し、自ら支援した

※右列は、今回の架空事例で設定した5点基準の要旨です。

Aさんが高い評価を付けた理由は、仕事量や対応回数、ミスの有無などでした。

一方、会社が設定した5点基準には、自ら判断することや、状況に応じて調整することなどが含まれていました。

つまり、Aさんと上司では、同じ仕事について異なる部分を重視していた可能性があります。

ただし、これだけで上司評価の3点が正しいと確定するわけではありません。

Aさんが実際にどのような仕事を行ったのかを確認し、設定された評価基準に該当するかを判断する必要があります。

評価項目ごとに5点と3点の違いを決めておく

今回の例では、5点の基準に「判断」や「調整」という仕事を設定しました。ただし、すべての評価項目で、5点を「自ら判断・調整できること」に統一すればよいわけではありません。

たとえば、評価する仕事が書類の正確性であれば、処理の難易度や確認範囲などで基準を分ける方法があります。

顧客対応であれば、対応する内容や難易度、担当範囲などが考えられます。部下指導であれば、指導する対象や内容、育成への関与の程度などが考えられます。

重要なのは、評価項目ごとに、標準として求める仕事と、それを上回る仕事の違いを決めることです。

会社が求める仕事を具体的にしておくことで、評価者も社員も同じ基準を確認しやすくなります。

同じ営業サポート職でも、等級が変われば評価基準も変わる

ここまでAさんの評価を確認しましたが、もう一つ考えたいことがあります。

それは、Aさんが所属する等級です。

たとえば、営業サポート職の2等級と3等級では、会社が求める仕事の範囲が異なる場合があります。

2等級では、標準的な担当業務を一人で完了することを求める。

3等級では、通常とは異なる条件にも対応し、必要に応じて後輩への指導を行うことを求める。

という設定です。

この場合、2等級で5点に該当する仕事が、3等級では3点の標準基準に含まれることもあります。

そのため、評価結果について確認するときには、点数だけでなく、どの等級の基準で評価しているかも重要です。

また、5点を取ったからといって、必ず次の等級へ昇格するとは限りません。昇格には、上位等級で求める役割を担えるかなど、別の判断基準を設けることもあります。

評価点と等級の関係を明確にしておくことで、社員へ説明できる内容も具体的になります。

評価基準を社員が知らなければ、不満は残りやすい

今回のAさんのケースでは、会社が5点・3点の基準を設定していたとします。

しかし、Aさんがその内容を知らなかった場合はどうでしょうか。

本人は、仕事量が多いことやミスなく処理したことを高く評価されると考えていたかもしれません。一方、会社は、複数案件の調整や通常と異なる状況への対応を5点として設定していました。

この状態では、評価結果が出た後に基準を説明しても、社員が納得できない可能性があります。

そのため、評価期間が始まる前に、評価項目と基準を社員へ示しておくことが大切です。

また、評価期間中に仕事内容や担当範囲が変わった場合は、必要に応じて評価対象を確認します。

評価結果を伝える段階で初めて基準を示すのではなく、評価される前から、何を求められているのか分かる状態にしておく必要があります。

評価結果への不満が出たとき、点数を変更する必要はあるのか

Aさんの自己評価が5点、上司評価が3点だった場合、会社は必ず点数を変更する必要があるのでしょうか。

本人が納得していないという理由だけで変更するのではなく、評価内容を確認する必要があります。たとえば、Aさんが5点基準に該当する仕事を実際に行っていたにもかかわらず、上司がその事実を把握していなかった場合です。

この場合は、必要な情報を確認したうえで、会社の評価決定手続きに従って再検討します。

一方、Aさんが行った仕事が3点基準に該当し、5点基準に該当する仕事が確認できなければ、3点という判断を維持することも考えられます。
大切なのは、社員の希望する点数に合わせるのではなく、設定した基準と実際の仕事を照らして判断することです。

また、評価基準そのものが曖昧で判断できない場合は、次回以降の評価に向けて基準を具体化する必要があります。

人事評価制度への不満を減らすために必要なこと

Aさんの事例では、自己評価と上司評価が違った理由を、4つの評価項目から考えました。

評価点に差があったのは、本人が重視した仕事と、会社が基準として設定した仕事に違いがあったためかもしれません。

このような違いを少なくするためには、評価シートに項目名を並べるだけではなく、具体的な評価基準を設定する必要があります。

さらに、その基準を評価期間が始まる前に社員へ示し、評価者も同じ内容を確認しておくことが重要です。

ただし、評価基準を具体的にしたからといって、すべての不満がなくなるわけではありません。

評価者が実際の仕事を十分に把握していなかったり、評価結果の説明が不足していたりする場合もあります。

そのため、評価シートの内容と、実際の評価運用の両方を確認する必要があります。

社員と評価者が同じ仕事を、同じ基準で確認できること。

それが、人事評価制度への不満を考えるうえで重要なポイントです。

JINJIPACKでは職種・等級ごとに評価基準を設計します

JINJIPACKでは、中小企業向けに等級・評価・賃金制度をまとめて設計しています。

評価制度では、会社の仕事内容を確認し、職種ごとに必要な評価項目を設定します。

さらに、等級によって求める仕事の範囲や責任が異なることを踏まえ、それぞれの評価基準を具体化します。

たとえば営業サポート職でも、一般社員と監督職では、求められる判断や調整の範囲が異なります。このように、会社が求める仕事を具体的な評価基準にすることで、評価者が判断しやすく、社員にも説明しやすい評価シートを作成します。

評価制度だけでなく、等級や賃金制度との関係も合わせて設計するため、昇格や昇給についても会社のルールを整理できます。

自社の人事評価制度でも、同じような不満が出ていませんか?

「社員の自己評価と上司評価が大きく違う」

「3点と5点の違いを説明できない」

「社員が頑張った仕事を、どの項目で評価すればよいか分からない」

このような場合は、現在の評価シートを確認してみてください。

評価項目の名称だけでなく、3点・5点の基準が具体的になっているでしょうか。

社員が行った仕事を、どの項目で確認するのか決まっているでしょうか。

職種や等級によって、求める仕事が分けられているでしょうか。

人事評価制度への不満が出たとき、評価結果だけでなく、評価シートに設定された仕事の内容と点数基準を確認することが大切です。

目次