製造業の人事評価制度|現場の「判断」を評価基準に変える作り方

製造業の人事評価制度|現場の「判断」を評価基準に変える作り方

工場で同じ作業をしている2人がいます。

通常どおり製造できている日は、2人の仕事に大きな違いはありません。

では、次のような日はどうでしょうか。

「いつもと材料の状態が違う」

「設備から普段と違う音がする」

「完成した製品の寸法が基準値に近づいている」

「予定より作業が遅れている」

このとき、

そのまま作業を続ける人。

一度確認する人。

上司へ報告する人。

自分で対応できる範囲を判断する人。

周囲の作業まで確認して対応する人。

では、仕事の内容に差が出ます。

製造業の人事評価制度を作るとき、「品質」「技術力」「生産性」といった言葉だけを並べても、こうした違いは評価表に表れません。

そこで注目したいのが、

「仕事の途中で、何を確認し、どう対応しているか」

です。

この記事では、一般的な評価項目を並べるのではなく、製造現場で社員の仕事に違いが表れやすい場面を取り出し、人事評価の基準へ変える方法を解説します。

目次

製造業の評価基準は「作業名」だけでは作れない

たとえば、製造職の仕事として、

「機械を操作する」

という業務があるとします。

これだけなら、機械を操作できる社員は全員同じ評価になってしまいます。

しかし実際の現場では、

作業指示を確認する。

製品に応じた条件を確認する。

材料を確認する。

設備の状態を確認する。

機械を操作する。

加工後の状態を確認する。

異常があれば対応する。

という複数の仕事が含まれています。

つまり、

「機械を操作できるか」だけでは、その社員が仕事をどこまで理解して行っているかは分かりません。

評価基準を作るときには、作業名だけを見るのではなく、その前後にある確認や対応まで見ていきます。

製造現場では「いつもと違うとき」に仕事の違いが見えやすい

決められた条件で、決められた製品を、決められた手順どおりに作る。

このような通常作業だけを見ると、社員ごとの違いが分かりにくい場合があります。

一方で、

材料が違う。

設備の状態が違う。

品質に変化がある。

生産が遅れている。

不良が発生した。

といった場面では、社員によって対応が変わります。

たとえば設備に異常があった場合。

ある社員は、異常に気づかず作業を続ける。

ある社員は、異常に気づいて上司へ報告する。

ある社員は、異常の内容を確認して初期対応を行う。

現場リーダーであれば、生産への影響を確認して、作業者や関係部署へ指示する。

この違いを、

「技術力が高い」

「判断力がある」

という言葉だけで終わらせず、実際の仕事として評価基準にします。

評価基準は「確認すること」と「その後の対応」に分ける

製造業の評価基準を具体的にするときは、一つの仕事を、

①何を確認・把握するのか

②確認した結果、何を実行・対応するのか

に分けると整理しやすくなります。

たとえば「製造作業」であれば、

作業指示、製品、数量、加工条件を確認することができる。確認した内容に基づき、決められた手順で担当する製品を製造することができる。

とします。

「異常時対応」であれば、

設備や製品の異常内容を確認することができる。確認した内容を上司へ報告し、指示された対応を行うことができる。

という形です。

「改善」であれば、

担当作業の時間、手順、不具合の発生状況を確認することができる。確認した内容から改善が必要な箇所を整理し、作業方法の見直しを行うことができる。

と考えられます。

「積極的に改善する」

「品質意識を持つ」

といった表現よりも、

評価者が実際の仕事を見て確認できる文章

にすることがポイントです。

「品質意識」を評価する前に、品質に関わる仕事を分ける

製造業の評価項目で使われやすい言葉の一つが「品質」です。

しかし、

「品質意識が高い」

という項目では、何をもって評価するのかが分かりません。

そこで「品質」という言葉を一度外して、現場で行っている仕事を見ます。

たとえば製造職なら、

作業前に図面や仕様を確認する。

加工条件を確認する。

作業中に製品の状態を確認する。

完成後に寸法や外観を確認する。

異常を見つけたら作業を止める。

不良が疑われる場合は上司へ報告する。

といった仕事があります。

つまり、会社が「品質意識」と呼んでいたものの中には、実際には複数の行動が含まれています。

そのため評価表には、

「品質意識」

という大きな言葉を一つ置くのではなく、

自社で特に重要な仕事を取り出して評価する

という方法があります。

「技術力が高い」を評価項目にすると違いが説明できない

技術力も同じです。

「Aさんは技術力が高い」

と言うことはできても、

「では、Bさんとの違いは何ですか?」

と聞かれると説明が難しくなることがあります。

そこで、技術力という言葉を実際の仕事へ戻します。

たとえば、

図面を読み取れる。

製品に応じて加工条件を確認できる。

設備の設定を変更できる。

加工後の状態から調整が必要か判断できる。

通常とは異なる状態に対応できる。

といった仕事です。

こうして分けると、

「技術力5点」

ではなく、

どの仕事をどの状態まで行えているのか

を評価できるようになります。


製造業の評価基準は「通常時」と「変化があったとき」を分けて考える

評価項目を作るときに、もう一つ確認したいのが、

通常どおり仕事が進んでいるとき

と、

通常とは違うことが起きたとき

です。

たとえば製造作業なら、

通常時

決められた条件・手順に沿って担当作業を完了する。

変化があったとき

製品・材料・設備等の状態を確認し、必要な報告や対応を行う。

という違いがあります。

一般社員には、異常を見つけて上司へ報告するところまで求める。

経験を積んだ社員には、自分で状況を確認して担当範囲の初期対応まで求める。

現場リーダーには、他の工程への影響も確認して必要な指示を求める。

というように、同じ現象でも求める対応範囲を変えられます。

「作業ができる」と「状況に合わせて対応できる」は分けて評価する

たとえば、ある設備を操作できる社員が2人いたとします。

2人とも通常の製品であれば、一人で製造できます。

しかし条件が変わったとき、

Aさんは上司から細かく指示を受ける必要がある。

Bさんは変更内容を確認し、自分の担当範囲で必要な調整を行える。

のであれば、同じ「機械操作ができる」でも仕事の状態は異なります。

この違いを、

「Aさんは3点、Bさんは5点」

と点数だけで表すのではなく、

何が違うため評価が変わるのか

を先に文章にします。

人事評価制度では、点数を決める前に、

点数が違う理由を仕事の違いとして説明できる状態

にしておくことが重要です。

同じ「異常対応」でも社員の役割によって見る範囲が変わる

ここで、実際の評価基準を比較してみます。

テーマは「設備異常」です。

一般社員

担当設備の音、動作、表示等を確認することができる。通常と異なる状態を確認した場合は作業を止め、上司へ報告することができる。

見る範囲は自分の担当設備です。

中堅社員

担当設備の異常内容と作業への影響を確認することができる。確認した状況に応じて、担当範囲の初期対応を行うことができる。

自分で確認し、一定範囲まで対応します。

現場リーダー

担当工程の設備異常と生産への影響を確認することができる。復旧までの作業、人員、関係者への連絡を調整し、必要な指示を行うことができる。

見る範囲が自分の設備から工程へ広がります。

管理職

部門内の設備稼働状況と生産計画への影響を把握することができる。復旧、生産計画、人員配置等について必要な対応を決定し、部門全体の業務を調整することができる。

さらに部門全体へ広がります。

同じ「設備異常」という出来事でも、

誰が、どの範囲を確認し、どこまで対応するのか

によって評価基準を変えられます。

品質管理職では「製造する人」と違う場面を見る

同じ工場でも、製造職と品質管理職では仕事の流れが違います。

たとえば不適合品が見つかった場合。

製造職では、

製品の状態を確認することができる。異常や不良が疑われる場合は作業を止め、上司へ報告することができる。

とします。

一方、品質管理職では、

不適合の内容、発生状況、対象範囲を確認することができる。確認した情報をもとに関係する工程や記録を調査し、必要な処置につなげることができる。

というように、確認する対象も、その後の対応も異なります。

「品質」という共通項目を全社員へ設定するのではなく、

その職種が品質に関わる場面で、実際に何をしているのか

から評価基準を作ります。

後輩指導は「教えた」ではなく相手の作業まで見る

現場リーダーや指導担当者になると、自分の作業だけではなく、後輩への指導も仕事になります。

ここでも、

「後輩を適切に指導することができる」

だけでは基準が曖昧です。

たとえば、

新人・後輩の作業手順と作業結果を確認することができる。確認した内容から不足している点を伝え、正しい作業方法を指導することができる。

とします。

ポイントは、

「教えたか」ではなく、相手の作業を確認したうえで必要な指導をしたか

を見ることです。

製造業では、自分自身が高い技術を持っていることと、他の社員へ仕事を教えられることは同じではありません。

そのため、指導を役割として求めるのであれば、自分の技術とは別の仕事として評価基準を作ります。

「改善したか」だけでなく、改善前に何を見たのかを評価する

改善についても、

「改善提案を行う」

だけでは評価が難しくなります。

思いついたアイデアを出すことと、現場の状態を確認したうえで改善することは同じではないからです。

たとえば、

担当作業の時間、手順、不具合の発生状況を確認することができる。確認した内容から改善が必要な箇所を整理し、作業方法の見直しを行うことができる。

とします。

リーダーであれば、

チームの作業時間、不具合、進捗状況を確認することができる。優先して対応する課題を整理し、メンバーと改善を進めることができる。

というように範囲を変えます。

これなら「改善件数」だけでなく、

何を根拠に改善したのか

まで確認できます。

製造業の評価表は「名詞」より「動詞」を確認する

評価表ができたら、一度、評価項目や評価基準に使っている言葉を確認してみてください。

たとえば、

品質

技術力

責任感

改善力

判断力

指導力

といった名詞が多くなっていないでしょうか。

これらの言葉が悪いわけではありません。

ただし、その言葉だけでは、

評価者が何を見ればよいのか

が分からない場合があります。

そこで、

品質
→ 何を「確認する」のか

技術力
→ 何を「操作する」「調整する」のか

改善力
→ 何を「把握する」「見直す」のか

指導力
→ 何を「確認する」「教える」のか

というように、実際の動作へ置き換えてみます。

評価表に名詞が並んでいたら、

「この項目は、実際の仕事では何をしている状態なのか?」

と問い直すことが、具体化の第一歩です。

5点・3点・1点は「優秀・普通・不足」ではなく仕事の状態を書く

評価項目が決まったら、次に点数基準を作ります。

ここでも、

5点=非常に優秀

3点=普通

1点=不足

だけでは、評価者によって判断が変わります。

まず3点に、

その職種・役割として会社が求めている標準の仕事

を書きます。

たとえば「製品確認」なら、

3点

製品の寸法・外観・加工状態を確認することができる。異常が疑われる場合は作業を止め、上司へ報告することができる。

ここを基準に、5点では標準以上に求める対応を、1点では不足している状態を具体化します。

点数の名前を考えるより、

実際の仕事で何が違うのか

を先に決める方が、評価者間の認識を合わせやすくなります。

製造業の評価項目は増やすより「違いが出る場面」を残す

工場の仕事を細かく分解すると、評価候補はいくらでも出てきます。

しかし、日常業務をすべて評価項目にする必要はありません。

評価項目を選ぶときには、

「社員によって仕事の違いが出る場面か」

を確認します。

たとえば、

全員が同じ手順で必ず行う単純な記録。

よりも、

異常を確認したときの対応。

条件変更があったときの確認。

不具合が発生したときの対応。

作業が遅れたときの調整。

後輩が間違えたときの指導。

などの方が、役割や習熟度による違いを表しやすい場合があります。

評価項目を増やすのではなく、

その職種・等級の違いが表れる仕事を選ぶ

ことが重要です。

評価表ができたら「現場の4場面」で確認する

製造業の評価表を作ったら、最後に次の4つの場面を想定して確認してみます。

①いつもどおり作業しているとき

通常業務を一人で行えるか。

②いつもと違う状態に気づいたとき

何を確認し、誰へ報告するのか。

③問題が実際に発生したとき

どこまで自分で対応し、どこから上司へ判断を求めるのか。

④他の社員と一緒に仕事をするとき

自分の仕事だけを見るのか、後輩・チームの仕事まで確認するのか。

この4場面を当てはめても評価基準が変わらないのであれば、一般社員・中堅社員・リーダーの違いを十分に表現できていない可能性があります。

反対に、

「ここからは自分で判断してほしい」

「この段階なら後輩まで見てほしい」

という違いが見えてくれば、等級ごとの評価基準へ落とし込みやすくなります。

製造業の人事評価制度は「現場で判断が分かれるところ」を言葉にする

製造業の人事評価制度を作るとき、他社の評価項目を集めることから始める必要はありません。

自社の現場を見れば、評価基準の材料があります。

いつも何を確認してから作業しているのか。

どのような変化に気づいてほしいのか。

異常が起きたら何をしてほしいのか。

どこまで自分で対応してほしいのか。

どの段階から後輩やチームまで見てほしいのか。

こうした場面を整理し、

「確認・把握」から「実行・対応」までを文章にする。

これによって、

「品質意識が高い」

「技術力がある」

「判断力がある」

といった抽象的な言葉を、実際の仕事で確認できる評価基準へ変えることができます。

製造業の評価制度で大切なのは、製造業らしい言葉をたくさん評価表に入れることではありません。

自社の現場で、社員にどのような確認と対応を求めているのかを具体的にすることです。

製造業向け評価シートで「3点」の具体例を確認

評価基準を作る際、

「どこまで具体的に書けばよいのか」

「5点・3点・1点をどう分ければよいのか」

と迷う場合があります。

JINJIPACKでは、製造業向けの評価シートをご用意しています。

実際の評価項目と評価基準を見ながら、自社で評価表を作る際の参考にしていただけます。

JINJIPACKでは「職種×等級」に合わせて評価基準を具体化

JINJIPACKでは、中小企業向けに等級・評価・賃金制度をまとめて設計しています。

製造業の場合も、最初から全社員へ同じ評価項目を設定するのではありません。

製造職。

品質管理職。

生産管理職。

営業職。

など、実際の仕事内容に合わせて職種を整理します。

さらに同じ製造職でも、

上司の指示・指導のもとで行う段階。

担当業務を一人で行う段階。

通常とは異なる状況にも対応する段階。

後輩やチームの仕事を確認する段階。

部門全体を管理する段階。

では、評価基準を変えます。

評価文では、抽象的な言葉だけで終わらせず、

「何を確認・把握するのか」

そして、

「確認したうえで、何を実行・対応するのか」

まで具体化します。

また、3点をその職種・等級で求める標準として設定し、5点・1点との違いも実際の仕事として整理します。

自社の製造現場から人事評価制度を作ってみませんか?

製造業といっても、扱う製品も設備も工程も会社によって異なります。

だからこそ、一般的な「製造業の評価項目」をそのまま当てはめるのではなく、自社の現場を見ることが重要です。

まず、

どの場面で社員の仕事に違いが出るのか

を確認します。

次に、

その場面で何を確認してほしいのか

を決めます。

そして、

確認した結果、何をしてほしいのか

まで文章にします。

最後に、

職種・等級によって、確認する範囲と対応する範囲を変える。

この流れで整理すると、自社の仕事に合わせた評価基準を作りやすくなります。

評価シートを単に点数を付けるための表ではなく、

「この会社では、仕事のどこを大切にしているのか」を社員へ伝える資料

として活用してみてください。

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